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よくある症状 ⑤倦怠感について
2023/02/09 ☆よくある症状☆呼吸器内科☆病気の解説☆発熱外来
倦怠感は一般的に だるい、つらい と表現されます
疲れやすい、から 疲れてなにもできない まで程度は様々あります。
倦怠感の原因としては、以下が挙げられます
急性発症、意識障害、症状がつよい(呼吸・苦痛など) 冷汗、嘔吐、血圧低下
などがみられるものは重症の可能性があり、早期に診断が必要です。
倦怠感の他にある症状(随伴症状)で原因の鑑別をします
発熱 → 感染症、膠原病・血管炎、悪性腫瘍、肝炎
労作時呼吸困難 → 心不全、貧血
悪心 → 肝・腎・副腎不全、薬物・毒物
口渇 → 脱水、糖尿病、高Ca血症、薬物
体重減少 → 慢性炎症・感染症、悪性腫瘍、糖尿病、甲状腺機能亢進症、副腎不全
体重増加 → 心不全、腎不全、甲状腺機能低下症
便秘 → 高Ca血症、甲状腺機能低下症
しびれ → 栄養障害、糖尿病
抑うつ気分 → うつ病
それぞれの病気の特徴を挙げます
①心不全
発症リスク: 動脈硬化のリスク(特に高血圧)、虚血性心疾患、弁膜症、心筋症の既往など
症状: 胸痛、呼吸困難、臥床時の咳、むくみ、体重増加、動悸、失神
②貧血
発症リスク: 腹部手術歴、癌の既往、肝疾患・腎疾患、月経過多、偏食など
症状: 労作時の息切れ・動悸
③脱水
発症リスク: 経口摂取不良 嘔吐、下痢、多尿、発熱・発汗、高温環境への暴露
症状: 口渇、尿量低下、体重減少
④感染症
発症リスク:感染症の暴露歴、免疫不全のリスクがある など
症状: 呼吸器、肝・胆・膵を含む消化器、泌尿生殖器、皮膚、関節などの局所症状
⑤肝不全・肝炎
発症リスク: アルコール多飲、輸血歴、薬剤使用歴、肝疾患既往など
症状: 食欲不振、悪心・嘔吐、右季肋部痛、腹部膨満、浮腫、黄疸・着色尿、掻痒感、発熱・関節痛
⑥腎不全
発症リスク: 高血圧、糖尿病、腎疾患・タンパク尿、膠原病の既往、薬剤使用歴、腎疾患の家族歴
症状: 食欲不振、悪心・嘔吐、尿量減少、呼吸困難、浮腫
⑦副腎不全(ホルモンが不足します)
発症リスク: ステロイド内服歴、結核やがんの既往、先行するストレス(感染症、外傷、手術など)
症状: 食欲低下、悪心・嘔吐、腹痛、下痢・便秘、発熱、筋肉・関節のこわばり
⑧血糖異常(低血糖や高血糖)
発症リスク: 糖尿病の既往 血糖降下薬・インスリンの使用歴
症状: 空腹感・あくび(低血糖)、口渇・多飲・多尿・体重減少(高血糖)
⑨電解質異常
発症リスク: 癌や呼吸器疾患の既往、薬物、アルコールの使用 など
症状: 頭痛・悪心・痙攣・意識障害(低Na血症)、脱力・多尿・便秘(低K血症)、多尿・口渇・便秘・悪心・嘔吐・意識障害(高Ca血症)
⑩希死念慮を伴ううつ病
発症リスク: 抑うつ気分、喜びの消失、全身倦怠感の日内変動、睡眠障害、食欲低下、集中力・決断力の低下、不安焦燥、自信の喪失 など
症状: 暗い表情、小さな声、遅い返答、身だしなみがみだれている など
⑪栄養障害
発症リスク: 摂食障害、消化器手術歴、アルコール多飲歴、慢性下痢、偏食(菜食主義など)、肝疾患の既往
症状: 体重減少、むくみ、しびれ、ふらつき、認知機能低下、皮膚・粘膜のあれ、労作時息切れ
⑫薬物・毒物
発症リスク: 利尿剤、降圧剤、向精神薬、抗ヒスタミン薬、筋弛緩薬、抗癌剤、アルコール、カフェイン、ニコチンをふくめ乱用している薬物の禁断症状の可能性もあり
症状: 起立性低血圧、意識変容、粘膜乾燥、腸蠕動音低下など
⑬膠原病・血管炎
症状: 筋肉痛・関節痛・こわばり、皮疹、レイノー現象(手足の先が部分的に白くなる)、頭痛、体重減少、眼・口の渇き、顔面紅斑、皮下結節、眼の充血、潰瘍、丘疹状出血斑、関節の圧痛、可動痛、関節腫脹、熱感、知覚低下など
⑭悪性腫瘍
発症リスク: 癌の既往歴、喫煙など
症状: 体重減少、消化器・呼吸器・泌尿生殖器に関する局所症状、夜間の背部痛・腰痛など
⑮甲状腺機能異常
発症リスク: 女性におおい、甲状腺疾患既往歴
症状: 動悸、発汗過多、暑がり、食欲あるのに体重減少、下痢、月経過少(甲状腺機能亢進症)、眠気、発汗減少、寒がり、体重増加、便秘、月経過多、むくみ、認知低下(甲状腺機能低下症)
まとめ
倦怠感は多くの病気でみられ、病気が見つかるきっかけとなることもあります
ながく続く場合は重大な病気が隠れている可能性もあり、放置せずに原因を調べましょう。
急速に進む場合や症状が強い場合は、早急な診断と治療が必要です。
参考文献
診療エッセンシャルズ新改訂第3版 第2章 全身倦怠感 日経BP
よくある症状 ④咳・痰について
2023/02/07 ☆よくある症状☆呼吸器内科☆病気の解説
咳は
痰がからむ場合を 湿性咳嗽
痰がからまない場合を 乾性咳嗽
と呼びます。
主な原因は以下が挙げられます。
また咳の持続期間により
3週間以内 → 急性咳嗽
3-8週間 → 遷延性咳嗽
8週以上 → 慢性咳嗽
とわけています。
以下の項目をもとに原因の鑑別を進めます
①経過
急性
ほとんどが感冒(かぜ)や急性気管支炎・肺炎などの感染症です
気道異物、気胸、クループ、気管支喘息、間質性肺炎、うっ血性心不全、刺激ガス吸入も原因となります
遷延性、慢性
3週間以上持続する咳は感染症の頻度が下がります
かぜや気管支炎が治った後に数週間咳が続くことがあります(感染後咳嗽)が、次第によくなることが多いです
8週間以上は咳喘息、アトピー咳嗽、後鼻漏が多くみられます。
そのほか結核などの慢性感染症や肺癌も鑑別となります。
②時間帯
夜間~早朝に症状が悪化する場合 → 気管支喘息、咳喘息を疑います
横になった直後に悪化する場合 → 心不全を疑います
③痰の有無
乾性咳嗽の場合(痰がない)
感冒(かぜ)・気管支炎、気管支喘息、COPD、胸膜炎、
間質性肺炎、過敏性肺炎、気胸、異物、刺激ガス吸入、クループなど
湿性咳嗽の場合(痰がある)
膿性痰 → 肺炎、急性気管支炎、慢性期気管支炎、気管支拡張症 など
粘性痰 → 感冒(かぜ)、急性気管支炎、肺炎、気管支喘息、うっ血性心不全、肺癌 など
血痰 → 肺結核、肺癌、気管支拡張症、肺梗塞、うっ血性心不全、肺炎 など
④ペットの飼育
気管支喘息、鳥飼育による過敏性肺臓炎、オウム病(クラミドフィラ感染症)など
⑤喫煙
肺癌、慢性閉塞性肺疾患(COPD) など
⑥職業歴
職業性喘息、職場環境に伴う過敏性肺炎(吸い込んだものが原因となる)
⑦薬歴
ACE阻害剤(降圧剤)による咳
薬剤性肺障害 など
⑧居住環境
転居・新築 → 気管支喘息
古い木造建築 → 過敏性肺臓炎
エアコン→ 空調病
羽毛布団 → 慢性過敏性肺臓炎
温泉・24時間風呂 → レジオネラ肺炎
⑨他の症状があるか
発熱 → 呼吸器感染症、間質性肺炎、過敏性肺炎、胸膜炎など
喘鳴 → 気管支喘息、心不全、COPD、気道異物
胸痛 → 気胸、胸膜炎、肺炎
起坐呼吸(横になれない) → 喘息発作、うっ血性心不全
胸焼け → 逆流性食道炎
咽頭痛 → 感冒、咽頭・扁桃炎
喉頭違和感 → 咽喉頭異常症 アトピー咳嗽
診療の流れは以下の通りです
急性発症の初診の場合 → 全身状態が良好であれば感冒や急性気管支炎として加療します
※近年はCOVID-19が流行してるため、初診時に抗原検査やPCR検査を行います
※喫煙者は禁煙が必要です(咳の原因となります)
慢性経過、再診、高齢者、聴診異常所見がある、高熱の場合 → レントゲン検査や血液検査を実施します
※近年はCOVID-19が流行してるため、必要時に抗原検査やPCR検査を行います
※結核と肺癌は必ず鑑別する必要がありますので、必要に応じて喀痰検査、細胞診検査を行います
レントゲン写真や血液検査で所見なしの場合
呼吸機能検査や喀痰検査(細胞診、培養)を追加します
副鼻腔炎や喉頭異常所見などの耳鼻科的疾患も考慮します
これらの流れで原因を探し、それに対する治療を行います。
まとめ
咳には湿性咳嗽(痰があるもの)と乾性咳嗽(痰がないもの)があります
咳の特徴や他の症状と合わせ原因を絞り、必要な検査を行い診断します
急性の咳嗽はほとんどが感染症です。
治った後も数週間遷延することがありますが、次第によくなることが多いです
8週以上長く続く場合や悪化傾向の場合は詳しい検査が必要です
参考文献
外来医マニュアル第4版 第2章 症候学 咳・痰 医歯薬出版
よくある症状 ③胸痛について
2023/02/02 ☆よくある症状☆呼吸器内科☆病気の解説
胸痛 にも
「胸が押されているような感じ」、「呼吸すると痛い」、「胸やけがする」、「押すと痛い」
など、種類が様々みられます。
胸痛がみられやすい心血管疾患、肺疾患の他、
食道、腹部疾患、皮膚・筋骨格疾患、悪性腫瘍も原因となります。
診断の手順としては、まずは Killer Chest Painの除外 が重要です
Killer Chest Painの原因には
急性冠症候群(心筋梗塞など)、肺血栓塞栓症、大動脈解離、緊張性気胸、食道破裂
があり、緊急の処置を行わないと生命にかかわります
これらの胸痛の特徴は
「耐え難い」「身の置き所がない」「これまで体験したことのない」
などと表現される激烈な痛みです。
ただし心筋梗塞は
胸部の「圧迫感:押される感じ」「絞扼感:つかまれるような感じ」と表現されることが多く
「激痛」はすくなく、また高齢者や糖尿病の方では痛みがないこともあり注意が必要です
Killer Chest Painではない場合は、胸痛の原因が
外因(主に外傷)によるものか
それ以外(内因、感染によるもの)か
を分けて考えます。
外因の場合は外傷の既往や、圧迫により胸痛が増強することが目安となります。
外因によらない内因性疾患、感染性疾患による場合は、以下の情報をもとに鑑別します
痛みの特徴はあるか
痛みの部位、持続時間、発症時間、痛みの性質、程度、放散(体を突き抜ける感じ)の有無
増悪・軽快の有無、これまで同様の痛みの有無
既往やかかっているの病気はあるか
心血管疾患(虚血性心疾患、弁膜症、心筋症)、高血圧症など
肺疾患 慢性閉塞性肺疾患など
代謝・内分泌疾患 脂質異常、糖尿病など
胸痛の他の症状があるか
呼吸困難、咳嗽、喀痰、喀血、悪心・嘔吐、胸やけ、動悸、冷や汗、失神
これらの情報をもとに疑わしい病気を推定し、必要な検査を行い診断をします
検査には血液検査、心電図検査、レントゲン検査、CT検査、上部内視鏡検査などが必要です
まとめ
胸痛の原因は多岐にわたります
その中でも緊急の処置が必要なKiller Chest Painの見極めが重要です
他の症状や経過をもとに検査を行い、原因を調べ治療を行います
参考文献
臨床医マニュアル第5版 7-13 胸痛 臨床医マニュアル編集委員会 (編集) 医歯薬出版
よくある症状 ②呼吸困難について
2023/01/30 ☆よくある症状☆呼吸器内科☆病気の解説
呼吸困難 とは
「呼吸時の不快な感覚」という、主観的な症状を指します
呼吸不全がある場合とない場合があります。
呼吸不全 とは
「室内気吸気時のPaO2 60Torr(SpO2 ≦90%)となる呼吸障害、またはそれに相当する異常状態」
であり、医学的に「酸欠」があるかどうかで決定されます。
正確には血液ガス分析で評価しますが、パルスオキシメーターで代用する場合は SpO2≦90%相当です
呼吸困難は、不安に伴うものなど、呼吸不全を合併しない場合も多くみられます
呼吸困難の原因となる疾患は、以下のとおり多岐にわたります
呼吸困難の評価
① 呼吸不全があるかどうか
血液ガス分析、もしくはパルスオキシメーター(SpO2 ≦ 90%)で評価します
その他、呼吸回数や呼吸の仕方なども合わせ総合的に判断します
呼吸不全があり、さらに
呼吸回数が多い(1分間に30回以上)、チアノーゼ(血色が悪い)、冷や汗、
頻脈、振戦(ふるえ)、血圧低下、意識障害(興奮・傾眠)
などがある場合は、重症の可能性があります
② 発症状況(超急性、急性、亜急性、慢性)の確認
発症の状況から
超急性(当日~数日)、急性(1か月以内)、亜急性(1~3か月)、慢性(3か月以上)
を確認し、それぞれに応じて原因のあたりをつけます
特に、超急性・急性で症状が強い場合は、早急に診断を付ける必要があります
③ 他の症状や全身状態の評価
呼吸困難は呼吸器・循環器疾患以外にも
神経筋疾患、内分泌疾患、血液疾患、腎疾患、中枢神経系疾患、悪性腫瘍 など
でもおこります
そのため
発熱、せき、たん、胸痛、足のむくみ、手足のしびれ・脱力、貧血 など
がみられるかどうかも診断のために重要です
肺や心臓の病気では、ヒューヒュー、ゼイゼイと音が聞こえたり、咳や痰が増えることが多く見られます
④ 検査
血液検査
血算、生化学、CRP、Dダイマー、BNP、内分泌検査、感染症検査 など
画像検査
胸部レントゲン検査 CT検査 など
生理学的検査
肺機能検査、心電図、心エコー検査 など
これらの流れから原因を評価し、それぞれの治療を行います
まとめ
呼吸困難は自覚症状で、呼吸不全(酸欠)がある場合と、ない場合もあります
呼吸器・循環器疾患が多いですが、他の病気も原因となることがあります。
発症の仕方・他の症状・検査結果をもとに原因をしらべ、治療を行います
参考文献
臨床医マニュアル第5版 7-15 呼吸困難 臨床医マニュアル編集委員会 (編集) 医歯薬出版
よくある症状 ①発熱について
2023/01/26 ☆よくある症状☆呼吸器内科☆病気の解説☆発熱外来
年齢を問わずよく見られる症状の一つです
感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(感染症法)では
「発熱」 体温が37.5℃以上
「高熱」 体温が38.0℃以上
を指します。
よく言われる「平熱」、や「微熱」の定義はありませんが、一般的には
「平熱」 37.0℃ 未満
「微熱」 37.0~37.4℃
があてはまります。
「平熱」には年齢の影響や個人差もあるため、それぞれご自分の平熱を知っておくとよいでしょう。
おおよそ「平熱」+0.5~0.7℃が、なんとなく調子のすぐれないと感じる「微熱」の目安と考えられます。
厚生労働省は37.5度以上の「発熱」が4日以上続く場合をCOVID-19を疑う目安としています。
体温は測定する条件(場所、時間、性別、年齢など)によっても変わるため注意が必要です。
測る部位 (直腸>口>腋の下で0.3~0.5℃の差)
健康な方でも0.5-1.0℃ほどの日内変動 (早朝に最低で夕方に最高、腋窩で37.3℃まで許容)
月経のある女性 (黄体期に+0.6℃上昇もありえる)
超高齢の方や低栄養の方 (体温が低くなることがある)
発熱の病態は大きく二つに分類されます
①Fever(発熱) ②hyperthermia(高体温症)
①Fever(発熱) → 解熱剤が有効です
外因性(感染や化学物質)、内因性(組織壊死や免疫反応)により
マクロファージなどの免疫細胞が発熱物質(サイトカイン)を放出することで
視床下部の体温調節中枢の設定値を上昇させ体熱産生と放熱抑制が起き体温が上昇
何らかの原因により炎症が起こり、発熱物質がつくられるため体温が上がる仕組みです。
例: 感染症、腫瘍、膠原病・血管炎、肉芽腫、アレルギー、組織壊死、血栓症・塞栓症、輸血反応など
原因の治療や、発熱物質を抑えることで熱を下げることができます
②Hyperthermia(高体温症) → 解熱剤が効きません
放熱能力を抑える環境要因(高温環境、乳児の過度の厚着)や身体的要因(内分泌疾患、薬剤)による
代謝亢進に伴う熱産生の増加、熱放熱の低下によって体温が上昇
体温調節中枢の設定値の変更はない
炎症ではなく、環境要因や全身の代謝が病的に上がること体温が上がる仕組みです
例: 熱中症、内分泌異常(甲状腺機能亢進症、副腎クリーゼ、褐色細胞腫など)、薬物作用・離脱、うつ など
強制的に冷やさない限り体温が下がりません。
診療の流れとしては、まずは経過から発熱の原因を類推します。
①急性(発症後数日以内)
原因としてウイルスや細菌などの感染症が多くみられます
感染症が重症化しやすい要素として
年齢 3か月未満の小児、超高齢者
免疫不全状態 ステロイド・免疫抑制剤、脾摘後、HIV感染
重度の基礎疾患 糖尿病、腎不全、肝硬変、COPD,悪性腫瘍
人工器官などの体内異物 人工弁、人工関節、人工血管など
があり、あてはまる場合は特に注意が必要です。
他に身体所見や血液検査から他の緊急対応が必要な病気も鑑別します
(肺塞栓・梗塞、心筋梗塞、腸管壊死、劇症肝炎、副腎クリーゼ、甲状腺疾患など)
②亜急性(週の単位)~慢性(月の単位で持続)
慢性感染症(肺結核などの抗酸菌症、真菌症など)
膠原病・血管炎
その他の非感染性炎症性疾患
内分泌異常
腫瘍
などを鑑別として検査を行い、原因を調べます
まとめ
発熱の原因は多岐にわたります。
①まずは頻度が高い感染症の除外(経過をみながら1週間程度で判断します)
②よくならない場合は、他の病気がないか調べる の流れが一般的となります
発熱の原因を調べる検査は
抗原・PCR検査、血液検査、喀痰検査、レントゲン検査、CT検査などがあります
参考文献
診療エッセンシャルズ新改訂第3版 第10章 日経BP
感染症法について 「5類」とは
感染症法とは
感染症の予防 及び 感染症の患者に対する医療に関する総合的な施策の推進 を図る
目的で制定されている法律です
感染症法では、各感染症は、感染力 及び 罹患した場合の重篤性等 を総合的に判断し
1~5類、新型インフルエンザ等感染症、指定感染症、新感染症
の8つに位置付けられ、実施できる措置が決められています
流行当初、COVID-19の詳細が不明であったため2類相当の「指定感染症」とされました
2021年の2月に法改正では5つの類型に入らない「新型インフルエンザ等感染症」に位置づけられ、2類よりも厳しい措置や強い行動制限が取れるようになっていました。
流行から3年が経過した現在、新型コロナウイルス感染症はオミクロン株に置きかわり、重症化率も低下しています。
また社会・経済活動への影響も鑑み、
「新型インフルエンザ等感染症」 から 「5類」 へ引き下げられる見通しとなりました。
そこで、今後COVID-19治療はどのように変わるのかをまとめてみました。
現在の感染症法において、実施できる措置は以下のとおりです
現在、COVID-19は「新型インフルエンザ等感染症」のため、かなり強力に措置が実施できるのに対し、
「5類」の場合は、入院勧告や就労制限、まん延防止策は実施できなくなります
現在、COVID-19の入院費、診断に必要な外来検査(抗原・PCR検査)、ワクチンは 公費 が適応ですが
「5類」の場合は、原則は自己負担が発生します
2023年1月11日 新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボードでは以下の影響が懸念されています
感染症法に基づく入院措置がなくなることによる影響
・行政が病床確保や入院調整を行ってきたが、措置がなくなる可能性
・今後は入院は病院間の連携により実施されるが、陽性者が増加した場合は対応が困難となる可能性
・自己負担が発生することにより、感染者が検査や受診を受けない・受けられない可能性
感染症法に基づく感染者の自宅・ホテル待機がなくなることによる影響
・感染者の自宅/宿泊療養、濃厚接触者の待機の要請がなくなるため、感染者との接触機会が増える可能性
・家族などを介した重症化リスクの高い高齢者への感染が発生する可能性
2023年春に COVID-19は「5類」へ引き下げられる見通し、となっています。
ただし経過措置として、当面の間は医療費などの公費負担は継続されるようです。
ウイルス自体が消滅したわけではないため、今後もCOVID-19は増減を繰り返すと予想されます。
ただし、基本的な対策自体はこれまでと同様です
① 体調が悪い時は休み、自宅または医療機関で検査を受けましょう
② 検査で陽性の場合
重症化リスクの高い方 発症5日以内であれば 抗ウイルス薬
重症化リスクのない方 対症療法
検査で陰性の場合
2-3日は自宅で様子を見ましょう
症状が続く/悪化する場合は再検査を受けましょう
③ 軽快した場合 発症翌日から7日間 みて、8日目から解除
悪化する場合 医療機関の受診が必要です
COVID-19自体の重症化率は低下していますが、リスクがある方への感染は生命にかかわります。
ご高齢の方はCOVID-19よりは、併発する誤嚥性肺炎や心不全などが死因となることが多くみられます。
重症化リスクの高い方へうつさないことが、今後COVID-19と共存するため最も重要と考えます。
まとめ
今春にもCOVID-19は「新型インフルエンザ等感染症」から「5類」へ引き下がる見込みです
法律上の根拠がなくなることでCOVID-19のための病床確保が難しくなる可能性があります
重症化率は低下していますが、感染力はつよく、ご高齢の方は合併症が生命にかかわります
重症化リスクの高い方へうつさないことが、最も重要と考えられます。
参考資料 厚生労働省 新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード
2023年1月11日 2023年1月17日 資料
COVID-19罹患後症状について ③ 神経系症状
神経系の罹患後症状について
疲労感・倦怠感、思考・集中力低下(brain fog)、頭痛、睡眠障害、めまい、
嗅覚・味覚異常、筋痛、しびれ
などが報告されています
発症から6 週間以上持続する神経症状があった方は,
疲労感・倦怠感(85%),brain fog(81%),頭痛(68%),しびれ感や感覚障害(60%),
味覚障害(59%),嗅覚障害(55%),筋痛(55%)
を認めたと報告されています。
疲労感・倦怠感は、
筋痛性脳脊髄炎/ 慢性疲労症候群 (Myalgic Encephalomyelitis/Chronic Fatigue Syndrome, ME/CFS)
に類似している病態の可能性が報告されています。
筋痛性脳脊髄炎/ 慢性疲労症候群とは
検査上は明らかな原因がはっきりしないのに対し、6ヵ月以上続く、もしくは再発を繰り返す
強い倦怠感を伴う日常活動能力の低下
活動後の強い疲労・倦怠感
睡眠障害、熟睡感のない睡眠
認知機能の障害、または起立性調節障害
がみられるものを指します。
(厚生労働省「CFS研究班」ホームページ 『慢性疲労症候群とは』より引用)
強いストレスや、ウイルス感染による免疫系の異常などの関与が示唆されていますが、原因はまだ明らかとはなっていません
brain fog は,
「脳の中に霧がかかったような、頭がボーっとする」状態で
記憶障害、集中力不足,精神的な疲労,不安などの症状がみられます。
うつ病や、認知症の早期を反映している可能性もあります
頭痛,筋痛,認知症状 などは、時間の経過とともに改善することが多いようですが
疲労感・倦怠感は、持続し増悪する可能性もある
と報告されています
神経系の罹患後症状発症のリスクとして
重症度が高い、喫煙者、女性、肥満、高齢、糖尿病 など が挙げられています
罹患後症状(神経系症状)の評価と対応について
神経系症状が3か月~半年以上続く場合
まずは、COVID-19 とは関係のない他の病気がないか調べます
神経系の精密検査 → 専門医療機関で頭部MRI、脳波,脳脊髄液検査
熟眠感がない場合 → 睡眠時無呼吸群検査
動悸や頻脈,起立性低血圧 → 自律神経異常症を疑います
疲労感・倦怠感が強い場合 → 血液検査、内分泌検査などを行います
明らかな原因がない場合は、罹患後症状と診断します。
まとめ
神経系の罹患後症状は疲労感・倦怠感、brain fog、頭痛、睡眠障害などが多くみられます
時間とともに回復することが多いですが、疲労感・倦怠感は持続する可能性もあります
COVID-19以外の原因がないかを調べ、明らかではない場合は罹患後症状と判断します
確立した治療法は定まっていませんが、症状を和らげる対症療法を行います。
引用文献
厚生労働省 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き
別冊 罹患後症状のマネジメント 第2.0版 (2022年10月14日)
COVID-19罹患後症状について ② 呼吸器、循環器症状
① 呼吸器系の罹患後症状について
息苦しさ、咳、痰 が多くみられます。
中等症以上の日本人を対象とした調査では、退院 3 カ月後に以下が多く見られました
筋力の低下 50.1%
呼吸困難 30.2%
倦怠感 25.6%
これらは 入院時の重症度が高い方 呼吸器の基礎疾患がある方 により多くみられました。
時間とともに症状の改善が見られましたが、12 カ月後でも約5 〜 10% にみられました。
胸部CT 画像の変化
退院3 カ月後でも約半数で器質化(肺炎治癒後の変化)と考えられる所見を認めました。
時間とともにCT所見は減少しましたが,12 カ月後でも6.3%にみられました。
肺機能障害の変化
退院3 カ月後では
拘束性障害(%FVC<80%→肺活量が減る) 約10%
拡散障害(%DLco<80% → 酸素の取り込みが悪くなる)38% 重症例では50% 以上
これらは 年齢 重症度 肺障害のマーカー (KL-6) が高い方に多く見られました
時間とともに肺機能障害は改善しましたが,12 カ月後でも7.1% にみられました。
罹患後症状(呼吸器症状)の評価と対応について
呼吸器症状の原因として
肺疾患(肺炎,気胸・縦郭気腫など)
心疾患(心不全,虚血性心疾患、肺血栓塞栓症など)
精神疾患(うつ・不安症など)
が鑑別となります
① 症状をきたしうる他の病気の鑑別(主に肺、心臓)
レントゲン、CT検査、肺機能検査、心電図検査、血液検査 など
② 治療
原因がみられる場合 → 原因に対する治療
明らかな原因がない場合 → 対症療法、リハビリ、精神的ケア
呼吸器系の罹患後症状は遷延することも多いですが、時間とともに大部分は改善します
明らかな呼吸器・循環器疾患が認められない場合も多くみられます。
COVID-19罹患後の倦怠感・筋力低下や、精神的な要素も複雑に関与していると考えられています。
② 循環器系の罹患後症状について
息切れ、起坐呼吸(横になれない)、胸痛、動悸、倦怠感、四肢のむくみや冷感,失神など
海外から COVID-19罹患に伴う急性冠症候群(急性心筋梗塞や不安定狭心症),心不全,不整脈,脳梗塞,血栓塞栓症 などの循環器病の合併が報告されています。
国内からは,酸素が必要な中等症以上で、心筋障害マーカー(高感度トロポニン、BNP)が陽性の方では、
3か月後の心臓MRIで42%に心筋障害が示唆され、26%で心筋炎の基準を満たした、と報告されています。
中等症以上のCOVID-19 罹患者で,心筋障害マーカーが陽性の場合は、心筋炎などによる心筋障害に注意が必要です。
循環器科系の罹患後症状は急速に悪化し、生命にかかわるリスクがあるため、正しい評価が重要です。
罹患後症状(循環器系症状)の評価と対応について
COVID-19罹患後に、呼吸苦、胸痛、動悸、四肢のむくみが増強した場合
① 心臓の評価
レントゲン、CT検査、心電図検査、血液検査 (BNP、Dダイマー) など
② 治療
所見がみられる場合 →循環器系の精査(心エコー検査、カテーテル検査など)
明らかな所見がない場合 →経過観察 改善ない場合は循環器系の精査
まとめ
呼吸器系の罹患後症状は頻度が高いですが、大部分は時間とともに改善します
症状が残る場合は、それに合わせた薬剤や漢方薬を処方し症状を緩和します
循環器系の罹患後症状は、急激に悪化し生命にかかわるリスクがあります
息切れ、動悸、むくみなどの症状が進行する場合は循環器系の評価が重要です
引用文献
厚生労働省 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き
別冊 罹患後症状のマネジメント 第2.0版 (2022年10月14日)
COVID-19罹患後症状について ① 疫学・頻度
1 COVID-19 罹患後症状とは
『COVID-19 罹患後に,感染性は消失したにもかかわらず,他に明らかな原因がなく,急性期から持続する症状や、あるいは経過の途中から新たに,または再び生じて持続する症状全般』
を、COVID-19罹患後症状 といいます(いわゆる後遺症です)。
少しわかりやすくすると
新型コロナウイルス感染症としては治ったのに、何らかの症状が続いていること
を指します
・病気のあとにからだが弱ってしまうこと
・COVID-19にかかる前から基礎疾患があること
・パンデミックによる生活の変化による心身への影響
なども、罹患後症状が続くことの原因として考えられています。
2 代表的な罹患後症状
以下の症状が多く報告されています。
頻度は以下のとおりです
<海外からの報告>
COVID-19 罹患から2カ月、または退院後 1 カ月の時点
罹患後症状がある方 72.5%
症状の内訳(重複可)
倦怠感(40%),息切れ(36%),嗅覚障害(24%),不安(22%),咳(17%),
味覚障害(16%),抑うつ(15%)
COVID-19 罹患から6 カ月 以上
罹患後症状のある方 54%
COVID-19 罹患から12 カ月の時点
罹患後症状がある方 軽症 16.4% 中等症 49.5% 重症 52.5%
※ 罹患後症状のリスクとして 女性 重症度の高さ が挙げられています。
ウイルス株の違いによる罹患後症状の頻度 (2022年6月イギリスからの報告)
デルタ株 流行時 10.8%
オミクロン株 流行時 4.5%
と、オミクロン株では頻度が低下したことが報告されています。
<国内の報告>
診断後3 カ月,6 カ月,12 カ月の時点での調査です
頻度は時間とともに低下していますが、12 カ月後でも30%以上みられました。
重症度別、性別の検討
海外での報告と同様に
女性 重症度の高さ が罹患後症状のリスク因子と考えられます。
世代別の検討
いずれも 中年者 で罹患後症状が多くみられました。
症状の内訳(重複可)
いずれの症状も時間とともに改善がみられていますが、一部は残ってしまいます。
罹患後症状があると、生活満足度は低下し、不安や抑うつ、睡眠障害も増悪すると報告されています。
3 罹患後症状の病態について
詳細な病態はまだ解明されておりません。
ウイルスに感染した組織(特に肺)への障害
微量なウイルスによる持続感染
ウイルス感染後の免疫調節不全による炎症
ウイルスによる血栓症、血管損傷・虚血
ウイルス感染による内分泌異常
などが原因として挙げられています
まとめ
罹患後症状は時間とともにその大半は改善しますが,一部は残ります。
他の病気を除外と、後遺症のため症状を和らげる対症療法が主となります。
オミクロン株に入れ替わり、過去と比較し罹患後症状も変化しています。
重症化率の低下に伴い、罹患後症状の頻度低下が示唆されています。
ただし感染者自体が増えているため、罹患後症状は増えると考えらえます。
次回は、COVID-19罹患後症状の具体的な症状について解説します
引用文献
厚生労働省 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き
別冊 罹患後症状のマネジメント 第2.0版 (2022年10月14日)
新型コロナ感染症(COVID-19)について ③治療
1 COVID-19の症状
従来はウイルス暴露から発症までの潜伏期は 約 5 日間(最長14日間) でしたが、
オミクロン株では、暴露から発症までの潜伏期は 2.9 日(99 % は曝露後10 日までに発症)
と短縮しています。
感染後に無症状のまま経過する人の割合は,20~40 %と考えられています。
患者発症時の主な症状は以下の通りです。
インフルエンザや普通のかぜと比較し、
鼻汁・鼻閉は少なく、嗅覚・味覚障害の多いことがCOVID-19 の特徴といわれてきましたが、
オミクロン株では、鼻汁・鼻閉,咽頭痛などの感冒様症状の頻度が増加し、嗅覚・味覚障害の頻度が減少した、と報告されています。
普通のかぜに近い症状になっています。
SARS-CoV-2 はまず鼻咽頭などの上気道に感染します。
大部分の方は発症から1 週間程度で治癒に向かいます。
一部の方では感染が下気道・肺まで進み、肺炎や酸欠を来し、重症化します。
重症化のリスク因子として、以下が知られています
重症化率は、第1波では8.2%でしたが、第5波では1.0%、オミクロンに置き換わった第6波は0.11%、第7波では0.03% まで低下しています。
ただし感染者数自体が増加しているため、過去と比較し死亡者数は増加しています。
2 COVID-19の重症度
COVID-19の診断後は、まず重症度判定を行います。
重症度は 肺炎 と 呼吸不全 の状態で4つに分類します。
・肺炎も呼吸不全(酸欠)もない場合 軽症
・肺炎がある場合 中等症
呼吸不全がない 中等症 I
呼吸不全がある 中等症II
・集中治療室で治療が必要な場合 重症
症状には個人差があります。
高熱や強い咽頭痛があっても、肺炎 や 呼吸不全 がない場合は軽症と判定されます。
3 COVID-19の治療方針
以下に重症度別の治療方針をお示しします。
【軽 症】
〇 自然に軽快することが多いです。
〇 解熱薬や鎮咳薬などの対症療法を必要に応じて追加します。
〇 重症化リスク因子のある場合は、発症5日以内であれば抗ウイルス薬の適応があります。
〇 軽症と判断されても急速に低酸素血症(酸欠)が進行することがあります。
【中等症 以上】
〇 原則入院で経過をみます。(症状が軽い場合は外来でも可です)
〇 重症化リスク因子のある場合は、発症5 日以内であれば抗ウイルス薬を投与します。
〇 呼吸不全がある場合は免疫抑制・調節症薬を投与します。
4 薬剤の特徴
① 抗ウイルス薬
【レムデシビル(商品名:ベクルリー点滴静注用100 mg)】(RNA 合成酵素阻害薬)
対象 : 重症化リスクのある、軽症~中等症IIの方(重症例では効果が期待できない可能性が高いです)
効果 : 発症7日以内に治療開始で、軽症~中等症Iの入院と死亡リスクを87%減少
中等症IIの死亡リスクを13%減少
投与方法: 5日間 点滴 (原則入院で投与)
【モルヌピラビル(商品名:ラゲブリオカプセル 200 mg)】(RNA 合成酵素阻害薬)
対象 : 重症化リスクのある、軽症~中等症Iの方
(重症化リスク)
61 歳以上、活動性の癌、慢性腎臓病、慢性閉塞性肺疾患、肥満(BMI 30kg/m2 以上)、重篤な心疾患(心不全、冠動脈疾患又は心筋症)、糖尿病、 ダウン症 、 脳神経疾患(多発性硬化症、ハンチントン病、重症筋無力症等)、 コントロール不良の HIV 感染症及び AIDS、肝硬変等の重度の肝臓疾患、臓器移植、骨髄移植、幹細胞移植後
効果 : 発症5日以内に治療開始で、入院と死亡リスクを30%減少
投与方法: 18 歳以上の方に 1 日 2 回 5 日間 経口投与
【ニルマトレルビル/リトナビル(商品名:パキロビッドパック )】(プロテアーゼ阻害薬)
対象 重症化リスクのある、軽症~中等症Iの方
(重症化リスク)
60 歳以上、BMI 25kg/m2 超、喫煙者、免疫抑制状態、慢性肺疾患(喘息はコントロール不良の方)、高血圧、心血管疾患(心筋梗塞、脳卒中、一過性脳虚血発作、心不全、不安定な狭心症、冠動脈バイパス術、経皮的冠動脈形成術、頚動脈内膜剥離術又は大動脈バイパス術の既往を有する)、糖尿病、活動性の癌、慢性腎臓病、神経発達障害(脳性麻痺、ダウン症候群等)又は医学的複雑性を付与するその他の疾患(遺伝性疾患、メタボリックシンドローム、重度の先天異常等)、医療技術への依存(持続陽圧呼吸療法等)
効果 : 発症5日以内に治療開始で、入院と死亡リスクを89%減少
投与方法: 12 歳以上かつ体重 40 kg 以上の小児、1 日 2 回、5 日間 経口投与
※ 併用禁忌・併用注意薬が多数あるため処方できる方に制限があります
【エンシトレルビル フマル酸(商品名:ゾコーバ錠)】(プロテアーゼ阻害薬)
対象 : 軽症~中等症Iの方
効果 : 発症から3日以内に治療開始で、 症状(鼻水/鼻づまり、喉の痛み、咳の呼吸器症状、熱っぽさ/発熱、倦怠感)の消失までの時間を約 24 時間短縮
投与方法: 12 歳以上の小児及び成人に 1日1回 5日間 経口投与
※ 高熱・強い咳症状・強い咽頭痛など、軽症でも臨床症状が強い方に処方を検討します
※ 併用禁忌・併用注意薬が多数あるため処方できる方に制限があります
② 中和抗体薬
オミクロン株が主流となり効果減弱の可能性が高いため、一般的に使用していません
③ 免疫抑制・調節薬
対象 : 中等症Ⅱ〜重症の方 原則入院で投与します
【デキサメタゾン】(ステロイド薬)
酸素が必要な中等症II以上で予後改善効果あり
投与方法: 6 mg 1 日1 回 10 日間まで(経口・経管・静注)
【バリシチニブ】(ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害剤)
レムデシビルと併用することで予後改善効果あり
投与方法: 4 mg 1 日1 回 最長14 日間(経口)
【トシリズマブ】(抗IL-6 受容体抗体)
ステロイド薬と併用することで予後改善効果あり
投与方法: 1 回8 mg/kg 点滴
5 妊婦さんに対する薬物療法
1)有益性投与(生命にかかわる状態など、どうしても必要な場合に投与)
レムデシビル、ニルマトレルビル/リトナビル、中和抗体薬、トシリズマブ
→ 妊婦中使用のデータは少ないです。
デキサメタゾン(ステロイド)
→ 胎盤通過性の低い(胎児へ影響の少ない)ステロイド剤
プレドニゾロン40 mg または ヒドロコルチゾン80 mgに置き換えて投与します
2)禁忌(投与できません)
バリシチニブ、モルヌピラビル
→ 動物実験では催奇形性や胎児毒性が報告されています。
5 小児に対する薬物療法
11歳未満では レムデシビル
12歳以上では レムデシビル、ニルマトレルビル/リトナビル、エンシトレルビル
の適応があります
ただし、2022/9月以降で小児の重症化率については 0.01%前後 と報告されています
一般的には対症療法のみで改善が見込めます
重症リスクがない場合は、基本的に抗ウイルス薬は不要と考えらえます
まとめ
COVID-19は大部分が軽症ですが、リスクが高い方の一部で重症化がみられます。
オミクロン株では重症化率が低下しましたが、感染者数は増加しています。
重症化リスクが高い方に早期に抗ウイルス薬が推奨されます
(抗ウイルス薬が処方できるかどうかは、重症化リスクの有無で決まります)
外来診療では
重症化リスクの高い方の重症化抑制に対し モルヌピラビル、ニルマトレルビル/リトナビル
重症化リスクの低い方の症状軽減に対し エンシトレルビル が選択可能です。
※基本的には自然治癒が見込めますので、リスクの低い場合は対症療法で十分と考えられます。
引用文献
厚生労働省 新型コロナウイルス感染症 診療の手引き 第8.2版 (2022年10月5日)
COVID-19に対する薬物治療の考え方 第15版(2022年11月22日)
第112回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード (令和4年12月28日) 資料
『現在の感染・療養状況等について 大阪府健康医療部』 より