2023年02月のブログ記事一覧Blog
アレルギーとは
アレルギー(allergy)とは
ギリシャ語の allos(変じた) と ergo(作用) に由来する用語です
本来生体の重要な防御機構である免疫反応が『変じて』
生体に有害な反応として『作用』している病的状態
つまり
免疫に何らかの異常がおき、体にとって悪さをしている
ことを指します。
からだは環境に存在するたくさんの感染症微生物をはじめとする外敵に囲まれています
その外敵をやっつけてからだを守る機能が免疫反応です。
免疫反応には 自然免疫 と 獲得免疫 の二つがあります。
〇自然免疫 → 入って来たすべての病原体などを排除する仕組み
白血球のうち、好中球、マクロファージ、樹状細胞などが担当します
かぜをひいたあと、自然に治るのは自然免疫の力です
〇獲得免疫 → 自然免疫からの情報を元に、特定の病原体がきたときに効率的に排除する仕組み
白血球のうち、リンパ球(T細胞、B細胞)が担当します
同じ病気にかかっても軽く済むか、発症しにくいのは獲得免疫の力です
獲得免疫はさらに 液性免疫 と 細胞性免疫 にわかれます
☆液性免疫
細胞外の異物に対して働きます
免疫グロブリン(抗体)をつくって特定の異物を排除します
免疫グロブリンはIgA、IgM、IgG、IgD、IgEの5種類があります
リンパ球(B細胞、ヘルパーT細胞)が担当します
☆細胞性免疫
細胞内に侵入した異物(感染など)に対して働きます
感染した細胞そのものを破壊して排除します
リンパ球(キラーT細胞)、NK細胞、マクロファージなどが担当します
このうち、アレルギーに直接関連するのは獲得免疫です。
アレルギーの病気はI~IV型の4つに分類されています
(V型までの5つに分類されることもありますが、V型はII型に含まれます)
I型アレルギー
抗原と抗体(IgE抗体)が反応し、即座に症状が出現します
即時型アレルギー(アナフィラキシー型)と呼ばれます
一般的なアレルギー疾患は、このI型アレルギーによる疾患を指しています。
アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、気管支喘息、じんましん、アトピー性皮膚炎、アナフィラキシーなど
II型アレルギー
細胞表面を抗原として抗体(IgG抗体やIgM抗体)が反応し、最終的に細胞そのものを破壊します
自己免疫性溶血性貧血、不適合輸血、免疫性血小板減少性紫斑病、Goodpasture症候群など
III型アレルギー
血液の中の成分(可溶性抗原)に対する抗体(IgG抗体やIgM抗体)により過剰な免疫複合体がつくられます
その結果、補体系(細胞を破壊する)を活性化し組織障害を起こします
自己免疫性疾患(関節リウマチ、SLEなど)、血清病、糸球体腎炎、過敏性肺炎など
IV型アレルギー
感作された(特定の抗原に反応する)T細胞による細胞性免疫型のアレルギーをおこします。
ツベルクリン反応、接触性皮膚炎、アトピー性皮膚炎、移植拒絶反応など
まとめ
アレルギーは免疫の異常(過剰な反応)により起こります
抗原の部位、抗体の種類、免疫の種類でI~IV型の4つに分類されます
一般的なアレルギー疾患はI型を指します
治療は抗ヒスタミン剤、ステロイド剤、免疫抑制剤、生物製剤まで多岐にわたります
参考資料
アレルギー総合ガイドライン 2016, 2022
一般社団法人日本アレルギー学会
よくある症状 ⑥発疹について
見た目でわかる皮膚の変化 を 皮疹 と呼びます
そのうち特に急に現れた皮疹を 発疹 と呼びます
赤くなってかゆい、ぽつぽつがでた、皮膚がもりあがってきた、など様々あります。
皮疹は 原発疹 と 続発疹(原発疹が変化したもの)に分類されます
それぞれの見た目、大きさ、経過により以下の呼び方に分かれます
原発疹
・盛り上がりのない色の変化 → 紅斑(赤)、紫斑(紫)、色素斑(その他)
・盛り上がりのあるもの → 丘疹(1cm未満)、結節(1-3㎝未満)、腫瘤(3㎝以上)
・内容をいれた盛り上がり →水疱(水)、膿疱(膿)
・一時的な盛り上がり → 膨疹(24時間以内に消退)
続発疹
・皮膚が欠損するもの →表皮剥離、びらん、潰瘍、亀裂(深さで名称が変わります)
・隆起、または陥凹するもの → 瘢痕、苔癬化、萎縮(皮膚が固くなり縮んだものなど)
・皮疹上に付着するもの → 鱗屑、痂疲(かさかさ、かさぶたなど)
診断の手順は
・急性の発疹(数日~2週以内)
・亜急性(2週~1か月以内)・慢性(1か月以上)
によりわかれます
急性の発疹のうち、生命にかかわる重要緊急疾患をKiller rashと呼びます
Killer Rash として以下の病気が知られています
敗血症疹、電撃性紫斑病(髄膜炎菌感染症など)、感染性心内膜炎、トキシック・ショック症候群
スティーブンス・ジョンソン症候群、中毒性表皮壊死症、川崎病、アナフィラキシー・ショック
重症を示唆するサイン(red flag sign)
バイタルに異常がある(脈拍、血圧、血中酸素濃度の異常)
アナフィラキシー症状(皮膚の他、呼吸・循環・消化管症状)
急速に拡大する皮疹、特に水疱、紫斑
髄膜刺激徴候(頭痛、嘔吐、項部硬直:首を前屈できないなど)
がある場合は重症の可能性があり、専門医療機関の受診が必要です。
red flag singがない場合は、発熱の有無や、発疹の範囲で病態を鑑別します
発熱がある場合
局所性(体の一部分にみられる)
水疱 → 単純ヘルペス、手足口病、水痘など
紅斑・丘疹 → 丹毒、蜂窩織炎、壊死性筋膜炎、麻疹、全身性エリテマトーデスなど
紫斑 → 感染性心内膜炎など
全身性(体の全体にみられる)
水疱 → 水痘、播種性帯状疱疹、痂疲性伝染性膿痂疹、敗血症疹など
紅斑・丘疹 → 麻疹、風疹、伝染性単核球症、HIV感染症、伝染性紅斑、猩紅熱、ツツガムシ病、川崎病など
紫斑 → 敗血症疹など
発熱がない場合
接触性皮膚炎(かぶれ)、じんましん、虫刺症(虫刺され)、帯状疱疹、毛嚢炎など
※亜急性・慢性経過の皮疹の場合は、特殊な病態の可能性があり、皮膚科専門医の診察が必要です
まとめ
急にでてきた皮膚の変化を発疹とよびます
一般的にはアレルギーや感染が原因となることが多くみられます
症状が強い場合や悪化する場合は、すぐに専門医療機関へ紹介が必要です。
参考文献
外来医マニュアル第4版 第2章 症候編 発疹 医歯薬出版
臨床医マニュアル第5版 24章 皮膚・軟部組織疾患 医歯薬出版
新型コロナウイルス感染症 診療の手引き(第9.0版)について
厚生労働省より、医療機関向けに新型コロナウイルス感染症 診療の手引きが発行されています
2020年3月の第1版が発行され、今回で第9版となりました。
主な内容や改訂点を抜粋します
1 病原体・疫学
病原体
・2022 年12 月の時点で世界で検出されるウイルスのほぼすべてがオミクロン
・オミクロンの中ではBA.5 系統が主流
・BQ.1 系統,XBB 系統、BM.1.1.1 系統などの亜系統が複数報告
国内発生状況
・2023 年2 月の時点で新規感染者数は全国的に減少傾向
・高齢者の減少は小さく、高齢者施設と医療機関の集団感染も多い
海外発生状況
・世界的な検査数の減少のため,感染者数は過小評価
感染者数 多くの地域で減少または不変、東地中海地域は増加
死亡者数 西太平洋, アメリカ, 東地中海地域で増加
2 臨床像
・オミクロンでは鼻汁・鼻閉,咽頭痛などの感冒様症状の頻度が増加、嗅覚・味覚障害の頻度が減少
・オミクロンの流行が始まってから世界中で再感染の報告が増加
重症化リスク因子
発熱などの症状がある方の受診・療養の流れ
3 症例定義・診断・届出
届出の対象
4 重症度分類とマネジメント
5 薬物療法
一般的に大部分の方は対症療法で軽快します
重症化リスクの高い方に抗ウイルス薬が適応となります
※詳細は過去のブログ 新型コロナ感染症(COVID-19)について ③治療 をご参照ください
6 院内感染対策 (省略します)
7 退院基準・解除基準
陽性者の療養期間
※一般的な外来診療の場合 発症日の翌日から7日間みて 軽快していれば8日目から隔離解除
※2023年5月8日にCOVID-19が感染症法上の『5類』へ変更後は、外出自粛が廃止となる見込みです。
まとめ
・COVID-19はオミクロンに置き換わり症状が軽くなっています
・高齢者施設と医療機関の集団感染はまだ多くみられます
・リスクの高い方は重症化することがあり、早期に抗ウイルス薬が推奨されます
・5類へ変更後は外出自粛が廃止となりますが、感染予防と拡大防止を継続しましょう
引用文献
厚生労働省 新型コロナウイルス感染症 診療の手引き 第9.0版 (2023年2月10日)
マスク着用の考え方の見直し等について
令和5年5月8日から、COVID-19は感染症法上の5類感染症に変更となる見込みです
それに先立ち、令和年3月13日よりマスク着用についての取り扱いが変更になります
『マスク着用の考え方については個人の判断に委ねることを基本とする」
現在の感染状況や厚生労働省アドバイザリーボードにおける議論を踏まえ2月10日に決定されました
今回は、こちらの文献を紹介します。
個人の判断と言われても、現実的にはなかなか判断が難しいところがあります。
そのため、その目安として感染防止対策としてマスクの着用が効果的である場面を挙げています
マスクの着用が推奨される状況
①屋内
他者と身体的距離(2m 以上を目安)がとれない場合
他者と距離がとれるが会話を行う場合
②屋外
他者と距離がとれず会話を行う場合
③高齢者等との面会時や病院内など、重症化リスクの高い方と接する場合
④着用が効果的な場面
(1)医療機関受診時
(2)医療機関や高齢者施設等への訪問時
(3)通勤ラッシュ時等混雑した電車やバスに乗車する時
逆に必要ないとされる状況
①屋内
他者と身体的距離がとれて会話をほとんど行わない場合
②屋外
他者と身体的距離が確保できる場合
他者と距離がとれない場合であっても会話をほとんど行わない場合
③乳幼児
(小学校に上がる前の年齢)、特に2歳未満では推奨されない。
2歳以上の就学前の子供についても、マスク着用を一律には推奨しない。
5類へと変更になると自粛要請ができなくなるため、症状がある場合についての記載もあります。
〇症状がある場合、新型コロナウイルス感染症の検査陽性の場合、同居家族に陽性者がいる場合は、周囲の者に感染を広げないため、外出を控えること。
〇通院等やむを得ず外出をする時には、人混みは避け、マスクを着用すること。
感染者と接する機会や、遷してしまう機会が増える可能性もあり、適切なマスクの着用が求められます。
まとめ
マスク推奨 屋内で密な場合、医療機関や重症化リスクの高い方に接する場合
マスク不要 十分な距離や換気がある場合、会話をしない場合
体調が悪い時は自主的に休みましょう
重症化リスクの高い方へうつさないことが最も重要です。
引用文献
新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけの変更等に関する対応方針について
(令和5年1月 27 日 新型コロナウイルス感染症対策本部)
マスク着用の考え方の見直し等について (令和5年3月 13 日以降の取扱い)
(令和5年2月10日 厚生労働省)
よくある症状 ⑤倦怠感について
2023/02/09 ☆よくある症状☆呼吸器内科☆病気の解説☆発熱外来
倦怠感は一般的に だるい、つらい と表現されます
疲れやすい、から 疲れてなにもできない まで程度は様々あります。
倦怠感の原因としては、以下が挙げられます
急性発症、意識障害、症状がつよい(呼吸・苦痛など) 冷汗、嘔吐、血圧低下
などがみられるものは重症の可能性があり、早期に診断が必要です。
倦怠感の他にある症状(随伴症状)で原因の鑑別をします
発熱 → 感染症、膠原病・血管炎、悪性腫瘍、肝炎
労作時呼吸困難 → 心不全、貧血
悪心 → 肝・腎・副腎不全、薬物・毒物
口渇 → 脱水、糖尿病、高Ca血症、薬物
体重減少 → 慢性炎症・感染症、悪性腫瘍、糖尿病、甲状腺機能亢進症、副腎不全
体重増加 → 心不全、腎不全、甲状腺機能低下症
便秘 → 高Ca血症、甲状腺機能低下症
しびれ → 栄養障害、糖尿病
抑うつ気分 → うつ病
それぞれの病気の特徴を挙げます
①心不全
発症リスク: 動脈硬化のリスク(特に高血圧)、虚血性心疾患、弁膜症、心筋症の既往など
症状: 胸痛、呼吸困難、臥床時の咳、むくみ、体重増加、動悸、失神
②貧血
発症リスク: 腹部手術歴、癌の既往、肝疾患・腎疾患、月経過多、偏食など
症状: 労作時の息切れ・動悸
③脱水
発症リスク: 経口摂取不良 嘔吐、下痢、多尿、発熱・発汗、高温環境への暴露
症状: 口渇、尿量低下、体重減少
④感染症
発症リスク:感染症の暴露歴、免疫不全のリスクがある など
症状: 呼吸器、肝・胆・膵を含む消化器、泌尿生殖器、皮膚、関節などの局所症状
⑤肝不全・肝炎
発症リスク: アルコール多飲、輸血歴、薬剤使用歴、肝疾患既往など
症状: 食欲不振、悪心・嘔吐、右季肋部痛、腹部膨満、浮腫、黄疸・着色尿、掻痒感、発熱・関節痛
⑥腎不全
発症リスク: 高血圧、糖尿病、腎疾患・タンパク尿、膠原病の既往、薬剤使用歴、腎疾患の家族歴
症状: 食欲不振、悪心・嘔吐、尿量減少、呼吸困難、浮腫
⑦副腎不全(ホルモンが不足します)
発症リスク: ステロイド内服歴、結核やがんの既往、先行するストレス(感染症、外傷、手術など)
症状: 食欲低下、悪心・嘔吐、腹痛、下痢・便秘、発熱、筋肉・関節のこわばり
⑧血糖異常(低血糖や高血糖)
発症リスク: 糖尿病の既往 血糖降下薬・インスリンの使用歴
症状: 空腹感・あくび(低血糖)、口渇・多飲・多尿・体重減少(高血糖)
⑨電解質異常
発症リスク: 癌や呼吸器疾患の既往、薬物、アルコールの使用 など
症状: 頭痛・悪心・痙攣・意識障害(低Na血症)、脱力・多尿・便秘(低K血症)、多尿・口渇・便秘・悪心・嘔吐・意識障害(高Ca血症)
⑩希死念慮を伴ううつ病
発症リスク: 抑うつ気分、喜びの消失、全身倦怠感の日内変動、睡眠障害、食欲低下、集中力・決断力の低下、不安焦燥、自信の喪失 など
症状: 暗い表情、小さな声、遅い返答、身だしなみがみだれている など
⑪栄養障害
発症リスク: 摂食障害、消化器手術歴、アルコール多飲歴、慢性下痢、偏食(菜食主義など)、肝疾患の既往
症状: 体重減少、むくみ、しびれ、ふらつき、認知機能低下、皮膚・粘膜のあれ、労作時息切れ
⑫薬物・毒物
発症リスク: 利尿剤、降圧剤、向精神薬、抗ヒスタミン薬、筋弛緩薬、抗癌剤、アルコール、カフェイン、ニコチンをふくめ乱用している薬物の禁断症状の可能性もあり
症状: 起立性低血圧、意識変容、粘膜乾燥、腸蠕動音低下など
⑬膠原病・血管炎
症状: 筋肉痛・関節痛・こわばり、皮疹、レイノー現象(手足の先が部分的に白くなる)、頭痛、体重減少、眼・口の渇き、顔面紅斑、皮下結節、眼の充血、潰瘍、丘疹状出血斑、関節の圧痛、可動痛、関節腫脹、熱感、知覚低下など
⑭悪性腫瘍
発症リスク: 癌の既往歴、喫煙など
症状: 体重減少、消化器・呼吸器・泌尿生殖器に関する局所症状、夜間の背部痛・腰痛など
⑮甲状腺機能異常
発症リスク: 女性におおい、甲状腺疾患既往歴
症状: 動悸、発汗過多、暑がり、食欲あるのに体重減少、下痢、月経過少(甲状腺機能亢進症)、眠気、発汗減少、寒がり、体重増加、便秘、月経過多、むくみ、認知低下(甲状腺機能低下症)
まとめ
倦怠感は多くの病気でみられ、病気が見つかるきっかけとなることもあります
ながく続く場合は重大な病気が隠れている可能性もあり、放置せずに原因を調べましょう。
急速に進む場合や症状が強い場合は、早急な診断と治療が必要です。
参考文献
診療エッセンシャルズ新改訂第3版 第2章 全身倦怠感 日経BP
よくある症状 ④咳・痰について
2023/02/07 ☆よくある症状☆呼吸器内科☆病気の解説
咳は
痰がからむ場合を 湿性咳嗽
痰がからまない場合を 乾性咳嗽
と呼びます。
主な原因は以下が挙げられます。
また咳の持続期間により
3週間以内 → 急性咳嗽
3-8週間 → 遷延性咳嗽
8週以上 → 慢性咳嗽
とわけています。
以下の項目をもとに原因の鑑別を進めます
①経過
急性
ほとんどが感冒(かぜ)や急性気管支炎・肺炎などの感染症です
気道異物、気胸、クループ、気管支喘息、間質性肺炎、うっ血性心不全、刺激ガス吸入も原因となります
遷延性、慢性
3週間以上持続する咳は感染症の頻度が下がります
かぜや気管支炎が治った後に数週間咳が続くことがあります(感染後咳嗽)が、次第によくなることが多いです
8週間以上は咳喘息、アトピー咳嗽、後鼻漏が多くみられます。
そのほか結核などの慢性感染症や肺癌も鑑別となります。
②時間帯
夜間~早朝に症状が悪化する場合 → 気管支喘息、咳喘息を疑います
横になった直後に悪化する場合 → 心不全を疑います
③痰の有無
乾性咳嗽の場合(痰がない)
感冒(かぜ)・気管支炎、気管支喘息、COPD、胸膜炎、
間質性肺炎、過敏性肺炎、気胸、異物、刺激ガス吸入、クループなど
湿性咳嗽の場合(痰がある)
膿性痰 → 肺炎、急性気管支炎、慢性期気管支炎、気管支拡張症 など
粘性痰 → 感冒(かぜ)、急性気管支炎、肺炎、気管支喘息、うっ血性心不全、肺癌 など
血痰 → 肺結核、肺癌、気管支拡張症、肺梗塞、うっ血性心不全、肺炎 など
④ペットの飼育
気管支喘息、鳥飼育による過敏性肺臓炎、オウム病(クラミドフィラ感染症)など
⑤喫煙
肺癌、慢性閉塞性肺疾患(COPD) など
⑥職業歴
職業性喘息、職場環境に伴う過敏性肺炎(吸い込んだものが原因となる)
⑦薬歴
ACE阻害剤(降圧剤)による咳
薬剤性肺障害 など
⑧居住環境
転居・新築 → 気管支喘息
古い木造建築 → 過敏性肺臓炎
エアコン→ 空調病
羽毛布団 → 慢性過敏性肺臓炎
温泉・24時間風呂 → レジオネラ肺炎
⑨他の症状があるか
発熱 → 呼吸器感染症、間質性肺炎、過敏性肺炎、胸膜炎など
喘鳴 → 気管支喘息、心不全、COPD、気道異物
胸痛 → 気胸、胸膜炎、肺炎
起坐呼吸(横になれない) → 喘息発作、うっ血性心不全
胸焼け → 逆流性食道炎
咽頭痛 → 感冒、咽頭・扁桃炎
喉頭違和感 → 咽喉頭異常症 アトピー咳嗽
診療の流れは以下の通りです
急性発症の初診の場合 → 全身状態が良好であれば感冒や急性気管支炎として加療します
※近年はCOVID-19が流行してるため、初診時に抗原検査やPCR検査を行います
※喫煙者は禁煙が必要です(咳の原因となります)
慢性経過、再診、高齢者、聴診異常所見がある、高熱の場合 → レントゲン検査や血液検査を実施します
※近年はCOVID-19が流行してるため、必要時に抗原検査やPCR検査を行います
※結核と肺癌は必ず鑑別する必要がありますので、必要に応じて喀痰検査、細胞診検査を行います
レントゲン写真や血液検査で所見なしの場合
呼吸機能検査や喀痰検査(細胞診、培養)を追加します
副鼻腔炎や喉頭異常所見などの耳鼻科的疾患も考慮します
これらの流れで原因を探し、それに対する治療を行います。
まとめ
咳には湿性咳嗽(痰があるもの)と乾性咳嗽(痰がないもの)があります
咳の特徴や他の症状と合わせ原因を絞り、必要な検査を行い診断します
急性の咳嗽はほとんどが感染症です。
治った後も数週間遷延することがありますが、次第によくなることが多いです
8週以上長く続く場合や悪化傾向の場合は詳しい検査が必要です
参考文献
外来医マニュアル第4版 第2章 症候学 咳・痰 医歯薬出版
よくある症状 ③胸痛について
2023/02/02 ☆よくある症状☆呼吸器内科☆病気の解説
胸痛 にも
「胸が押されているような感じ」、「呼吸すると痛い」、「胸やけがする」、「押すと痛い」
など、種類が様々みられます。
胸痛がみられやすい心血管疾患、肺疾患の他、
食道、腹部疾患、皮膚・筋骨格疾患、悪性腫瘍も原因となります。
診断の手順としては、まずは Killer Chest Painの除外 が重要です
Killer Chest Painの原因には
急性冠症候群(心筋梗塞など)、肺血栓塞栓症、大動脈解離、緊張性気胸、食道破裂
があり、緊急の処置を行わないと生命にかかわります
これらの胸痛の特徴は
「耐え難い」「身の置き所がない」「これまで体験したことのない」
などと表現される激烈な痛みです。
ただし心筋梗塞は
胸部の「圧迫感:押される感じ」「絞扼感:つかまれるような感じ」と表現されることが多く
「激痛」はすくなく、また高齢者や糖尿病の方では痛みがないこともあり注意が必要です
Killer Chest Painではない場合は、胸痛の原因が
外因(主に外傷)によるものか
それ以外(内因、感染によるもの)か
を分けて考えます。
外因の場合は外傷の既往や、圧迫により胸痛が増強することが目安となります。
外因によらない内因性疾患、感染性疾患による場合は、以下の情報をもとに鑑別します
痛みの特徴はあるか
痛みの部位、持続時間、発症時間、痛みの性質、程度、放散(体を突き抜ける感じ)の有無
増悪・軽快の有無、これまで同様の痛みの有無
既往やかかっているの病気はあるか
心血管疾患(虚血性心疾患、弁膜症、心筋症)、高血圧症など
肺疾患 慢性閉塞性肺疾患など
代謝・内分泌疾患 脂質異常、糖尿病など
胸痛の他の症状があるか
呼吸困難、咳嗽、喀痰、喀血、悪心・嘔吐、胸やけ、動悸、冷や汗、失神
これらの情報をもとに疑わしい病気を推定し、必要な検査を行い診断をします
検査には血液検査、心電図検査、レントゲン検査、CT検査、上部内視鏡検査などが必要です
まとめ
胸痛の原因は多岐にわたります
その中でも緊急の処置が必要なKiller Chest Painの見極めが重要です
他の症状や経過をもとに検査を行い、原因を調べ治療を行います
参考文献
臨床医マニュアル第5版 7-13 胸痛 臨床医マニュアル編集委員会 (編集) 医歯薬出版