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新型コロナ感染症(COVID-19)について ①原因と疫学

2023.01.03

呼吸器内科、発熱外来、内科の病気について簡単に解説をしていきます。

今回のテーマは『COVID-19について』です。何回かにわけて掲載します。

                                                            

1 コロナウイルス について

コロナウイルスのうち、ヒトに病気を引き起こすのは7種類知られています

そのうち4種類は軽いかぜの症状ですが、残りの3種類はより重症になる可能性があり、死に至ることもあります


① SARSコロナウイルス(SARS-CoV) 

  2002年 中国・広東省 重症急性呼吸器症候群(SARS)の原因として特定

  経路 : コウモリのコロナウイルスがハクビシンを介してヒトに感染

                                                             

② MERSコロナウイルス(MERS-CoV)

  2012年 アラビア半島 中東呼吸器症候群(MERS)の原因として特定

  経路 : ヒトコブラクダからヒトに感染

                                                        

③ SARSコロナウイルス2SARS-CoV-2)

  2019年12 月 中国・湖北省武漢市 新型コロナウイルス感染症の原因として特定

  経路 : 宿主動物は不明 ヒト―ヒト感染で世界的に流行


現在、世界的に大流行しているのが ③SARS-CoV-2  による感染症であり

新型コロナウイルス感染症 (Coronavirus disease 2019 ; COVID-19)  と呼びます。

COVID-19には『感染症』の意味が含まれているため、病名が COVID-19 となります。

                                                             

病原体 SARS-CoV-2 動物由来コロナウイルス
(厚生労働省 新型コロナウイルス感染症 診療の手引き 第8.2版より引用)

                                                            

2 COVID-19の感染経路

感染者から咳,くしゃみ,会話などの際に排出される、以下の吸入が主な感染経路です

 ウイルスを含んだ飛沫

 エアロゾル (飛沫より更に小さな水分を含んだ状態の粒子)


潜伏期 1 ~ 14 日間 曝露から5 日程度で発症
(ただし,2022/1からのオミクロン株は 潜伏期が2 ~ 3 日曝露から7 日以内の発症が大部分)

                                                     

発症前から感染性があり,発症から間もない時期の感染性が高いこと

がこれまでの感染症と異なる点であり、大流行の原因となってます。

Nature Medicine volume 26, pages672–675 (2020) より引用・改変

                                                   

Science. 2020 May 8;368(6491):eabb6936. より引用・改変

新規感染者のうち50%が 発症前の患者 と 無症状患者から と想定されています。

                                                       

世界保健機構(World Health Organization ; WHO)からの報告では、SARS-CoV-2 の環境下での生存期間は

プラスチック表面で最大72 時間、ボール紙で最大24 時間 とされています。

ただし、環境からの感染は全体の1割程度であり、過度な心配は不要です。

                                                         

3 COVID-19の動向
世界で流行株の半数を占めたものは以下のとおりです

 アルファ株(半数を占めた時期:2021 年3 月)

 デルタ株(同:2021 年6 月)

 オミクロン株(同:2022 年1 月)

                                                     

2023年1月現在、世界的に流行株はオミクロン株にほぼ置換されています。

アルファ株やデルタ株と比較して,酸素や人工呼吸管理を必要な、中等症・重症の割合が低下していることが報告されています。

                                                      

英国におけるオミクロン株の流行では,デルタ株と比較して致死率の低下は以下の通りです

 全体で67% 低下 

 18歳〜 69 歳以下(86 〜 87% 低下)、 70 歳以上(55%低下)

 男性(75% 低下)女性(56% 低下)

若年と比較し、70歳以上では致死率の低下は小さく、まだ注意が必要です。

                                                      

日本国内でも死亡者に占める80 歳以上の割合が高くなっています

ただしCOVID-19による肺炎よりは、基礎疾患の増悪や心不全・誤嚥性肺炎などの合併症が致死率に大きく関係しています。

                                  

まとめ

 オミクロン株に置き換わり若年層の重症化リスクは低減しましたが、高齢者のリスクは依然見られます。

 リスクの高い方へ感染を広げない配慮と対策が、引き続き重要と考えられます。

                                                      

次回はCOVID-19の検査について解説します

                                                      

引用文献

厚生労働省 新型コロナウイルス感染症 診療の手引き 第8.2版 (2022年10月5日)