COVID-19罹患後症状について ② 呼吸器、循環器症状
① 呼吸器系の罹患後症状について
息苦しさ、咳、痰 が多くみられます。
中等症以上の日本人を対象とした調査では、退院 3 カ月後に以下が多く見られました
筋力の低下 50.1%
呼吸困難 30.2%
倦怠感 25.6%
これらは 入院時の重症度が高い方 呼吸器の基礎疾患がある方 により多くみられました。
時間とともに症状の改善が見られましたが、12 カ月後でも約5 〜 10% にみられました。
胸部CT 画像の変化
退院3 カ月後でも約半数で器質化(肺炎治癒後の変化)と考えられる所見を認めました。
時間とともにCT所見は減少しましたが,12 カ月後でも6.3%にみられました。
肺機能障害の変化
退院3 カ月後では
拘束性障害(%FVC<80%→肺活量が減る) 約10%
拡散障害(%DLco<80% → 酸素の取り込みが悪くなる)38% 重症例では50% 以上
これらは 年齢 重症度 肺障害のマーカー (KL-6) が高い方に多く見られました
時間とともに肺機能障害は改善しましたが,12 カ月後でも7.1% にみられました。
罹患後症状(呼吸器症状)の評価と対応について
呼吸器症状の原因として
肺疾患(肺炎,気胸・縦郭気腫など)
心疾患(心不全,虚血性心疾患、肺血栓塞栓症など)
精神疾患(うつ・不安症など)
が鑑別となります
① 症状をきたしうる他の病気の鑑別(主に肺、心臓)
レントゲン、CT検査、肺機能検査、心電図検査、血液検査 など
② 治療
原因がみられる場合 → 原因に対する治療
明らかな原因がない場合 → 対症療法、リハビリ、精神的ケア
呼吸器系の罹患後症状は遷延することも多いですが、時間とともに大部分は改善します
明らかな呼吸器・循環器疾患が認められない場合も多くみられます。
COVID-19罹患後の倦怠感・筋力低下や、精神的な要素も複雑に関与していると考えられています。
② 循環器系の罹患後症状について
息切れ、起坐呼吸(横になれない)、胸痛、動悸、倦怠感、四肢のむくみや冷感,失神など
海外から COVID-19罹患に伴う急性冠症候群(急性心筋梗塞や不安定狭心症),心不全,不整脈,脳梗塞,血栓塞栓症 などの循環器病の合併が報告されています。
国内からは,酸素が必要な中等症以上で、心筋障害マーカー(高感度トロポニン、BNP)が陽性の方では、
3か月後の心臓MRIで42%に心筋障害が示唆され、26%で心筋炎の基準を満たした、と報告されています。
中等症以上のCOVID-19 罹患者で,心筋障害マーカーが陽性の場合は、心筋炎などによる心筋障害に注意が必要です。
循環器科系の罹患後症状は急速に悪化し、生命にかかわるリスクがあるため、正しい評価が重要です。
罹患後症状(循環器系症状)の評価と対応について
COVID-19罹患後に、呼吸苦、胸痛、動悸、四肢のむくみが増強した場合
① 心臓の評価
レントゲン、CT検査、心電図検査、血液検査 (BNP、Dダイマー) など
② 治療
所見がみられる場合 →循環器系の精査(心エコー検査、カテーテル検査など)
明らかな所見がない場合 →経過観察 改善ない場合は循環器系の精査
まとめ
呼吸器系の罹患後症状は頻度が高いですが、大部分は時間とともに改善します
症状が残る場合は、それに合わせた薬剤や漢方薬を処方し症状を緩和します
循環器系の罹患後症状は、急激に悪化し生命にかかわるリスクがあります
息切れ、動悸、むくみなどの症状が進行する場合は循環器系の評価が重要です
引用文献
厚生労働省 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き
別冊 罹患後症状のマネジメント 第2.0版 (2022年10月14日)