ブログ

COVID-19罹患後症状について ① 疫学・頻度

2023.01.10

                                                         

1 COVID-19 罹患後症状とは

                                                         

COVID-19 罹患後に,感染性は消失したにもかかわらず,他に明らかな原因がなく,急性期から持続する症状や、あるいは経過の途中から新たに,または再び生じて持続する症状全般

                                                         

を、COVID-19罹患後症状 といいます(いわゆる後遺症です)。

                                                         

少しわかりやすくすると

  
新型コロナウイルス感染症としては治ったのに、何らかの症状が続いていること

を指します

                                                         

・病気のあとにからだが弱ってしまうこと
・COVID-19にかかる前から基礎疾患があること
・パンデミックによる生活の変化による心身への影響 

                                                         
なども、罹患後症状が続くことの原因として考えられています。

                                                         


2 代表的な罹患後症状


以下の症状が多く報告されています。

                                                         

厚生労働省 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き 
別冊 罹患後症状のマネジメント 第2.0版 (2022年10月14日) より

                                                         

頻度は以下のとおりです

                                                         

<海外からの報告>

COVID-19 罹患から2カ月、または退院後 1 カ月の時点

 罹患後症状がある方 72.5%

  症状の内訳(重複可)

   倦怠感(40%),息切れ(36%),嗅覚障害(24%),不安(22%),咳(17%),

   味覚障害(16%),抑うつ(15%)

                                                         

COVID-19 罹患から6 カ月 以上

 罹患後症状のある方 54%

                                                         

COVID-19 罹患から12 カ月の時点

 罹患後症状がある方 軽症 16.4%  中等症  49.5% 重症  52.5%

 

※ 罹患後症状のリスクとして 女性 重症度の高さ が挙げられています。

                                                         

ウイルス株の違いによる罹患後症状の頻度 (2022年6月イギリスからの報告)

 デルタ株 流行時     10.8%

 オミクロン株 流行時   4.5%

と、オミクロン株では頻度が低下したことが報告されています。

                                                         

<国内の報告>

診断後3 カ月,6 カ月,12 カ月の時点での調査です

頻度は時間とともに低下していますが、12 カ月後でも30%以上みられました。

                                                         
 
重症度別、性別の検討

厚生労働省 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き 
別冊 罹患後症状のマネジメント 第2.0版 (2022年10月14日) より 作図

                                                         

海外での報告と同様に

女性 重症度の高さ が罹患後症状のリスク因子と考えられます。

                                                         

世代別の検討

厚生労働省 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き 
別冊 罹患後症状のマネジメント 第2.0版 (2022年10月14日) より 作図

                                                         

いずれも 中年者 で罹患後症状が多くみられました。

                                                         

症状の内訳(重複可)

厚生労働省 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き 
別冊 罹患後症状のマネジメント 第2.0版 (2022年10月14日) より引用

                                                         

いずれの症状も時間とともに改善がみられていますが、一部は残ってしまいます

罹患後症状があると、生活満足度は低下し、不安や抑うつ、睡眠障害も増悪すると報告されています。

                                                         


3 罹患後症状の病態について


詳細な病態はまだ解明されておりません

                                                         

 ウイルスに感染した組織(特に肺)への障害

 微量なウイルスによる持続感染

 ウイルス感染後の免疫調節不全による炎症

 ウイルスによる血栓症、血管損傷・虚血

 ウイルス感染による内分泌異常

                                                         

などが原因として挙げられています

                                                         


まとめ

 罹患後症状は時間とともにその大半は改善しますが,一部は残ります

 他の病気を除外と、後遺症のため症状を和らげる対症療法が主となります。

 オミクロン株に入れ替わり、過去と比較し罹患後症状も変化しています。

 重症化率の低下に伴い、罹患後症状の頻度低下が示唆されています。

 ただし感染者自体が増えているため、罹患後症状は増えると考えらえます。

                                                         

次回は、COVID-19罹患後症状の具体的な症状について解説します

                                                         

引用文献
厚生労働省 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き 
別冊 罹患後症状のマネジメント 第2.0版 (2022年10月14日)