COVID-19罹患後症状について ① 疫学・頻度
1 COVID-19 罹患後症状とは
『COVID-19 罹患後に,感染性は消失したにもかかわらず,他に明らかな原因がなく,急性期から持続する症状や、あるいは経過の途中から新たに,または再び生じて持続する症状全般』
を、COVID-19罹患後症状 といいます(いわゆる後遺症です)。
少しわかりやすくすると
新型コロナウイルス感染症としては治ったのに、何らかの症状が続いていること
を指します
・病気のあとにからだが弱ってしまうこと
・COVID-19にかかる前から基礎疾患があること
・パンデミックによる生活の変化による心身への影響
なども、罹患後症状が続くことの原因として考えられています。
2 代表的な罹患後症状
以下の症状が多く報告されています。
頻度は以下のとおりです
<海外からの報告>
COVID-19 罹患から2カ月、または退院後 1 カ月の時点
罹患後症状がある方 72.5%
症状の内訳(重複可)
倦怠感(40%),息切れ(36%),嗅覚障害(24%),不安(22%),咳(17%),
味覚障害(16%),抑うつ(15%)
COVID-19 罹患から6 カ月 以上
罹患後症状のある方 54%
COVID-19 罹患から12 カ月の時点
罹患後症状がある方 軽症 16.4% 中等症 49.5% 重症 52.5%
※ 罹患後症状のリスクとして 女性 重症度の高さ が挙げられています。
ウイルス株の違いによる罹患後症状の頻度 (2022年6月イギリスからの報告)
デルタ株 流行時 10.8%
オミクロン株 流行時 4.5%
と、オミクロン株では頻度が低下したことが報告されています。
<国内の報告>
診断後3 カ月,6 カ月,12 カ月の時点での調査です
頻度は時間とともに低下していますが、12 カ月後でも30%以上みられました。
重症度別、性別の検討
海外での報告と同様に
女性 重症度の高さ が罹患後症状のリスク因子と考えられます。
世代別の検討
いずれも 中年者 で罹患後症状が多くみられました。
症状の内訳(重複可)
いずれの症状も時間とともに改善がみられていますが、一部は残ってしまいます。
罹患後症状があると、生活満足度は低下し、不安や抑うつ、睡眠障害も増悪すると報告されています。
3 罹患後症状の病態について
詳細な病態はまだ解明されておりません。
ウイルスに感染した組織(特に肺)への障害
微量なウイルスによる持続感染
ウイルス感染後の免疫調節不全による炎症
ウイルスによる血栓症、血管損傷・虚血
ウイルス感染による内分泌異常
などが原因として挙げられています
まとめ
罹患後症状は時間とともにその大半は改善しますが,一部は残ります。
他の病気を除外と、後遺症のため症状を和らげる対症療法が主となります。
オミクロン株に入れ替わり、過去と比較し罹患後症状も変化しています。
重症化率の低下に伴い、罹患後症状の頻度低下が示唆されています。
ただし感染者自体が増えているため、罹患後症状は増えると考えらえます。
次回は、COVID-19罹患後症状の具体的な症状について解説します
引用文献
厚生労働省 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き
別冊 罹患後症状のマネジメント 第2.0版 (2022年10月14日)