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アレルゲン免疫療法について

2023.03.18

                                                       

アレルギー性鼻炎の薬物治療は大きく二つにわかれます

                                                       

①症状を一時的に抑えるもの

 ヒスタミンH1受容体拮抗薬(H1-receptor antagonist, H1RA)

 鼻噴霧用ステロイド薬

 ロイコトリエン受容体拮抗剤(leukotriene receptor antagonist, LTRA)

 プロスタグランジンD2・トロンボキサンA2受容体拮抗薬

 Th2サイトカイン阻害薬

 血管収縮薬(点鼻は重症以上)

 抗IgE抗体(重症以上)

                                                        

②アレルギーを起こしにくい体質にするもの

 アレルゲン免疫療法

                                                        

薬物療法の中で治癒が目指せる唯一の方法です。

ただし、他の薬物療法が即効性を期待できるのに対し、アレルゲン免疫療法は3~5年を目安に年単位の継続が必要です。

今回はアレルゲン免疫療法について紹介します

                                                       

●アレルゲン免疫療法とは

アレルギー性鼻炎(含花粉症)は、アレルゲン(または抗原)と呼ばれる原因物質(ダニ、スギ花粉など)によって引き起こされます。

アレルゲン免疫療法は、アレルギーの原因となっているアレルゲンを少量から、徐々に量を増やし繰り返し投与することにより、体をアレルゲンに慣らし、症状を和らげる治療法です。

根本的な体質改善(長期寛解・治癒)も期待されます。

                                                       

方法は2つあります。

皮下免疫療法(subcutaneous immunotherapy: SCIT)スキット

SCITはアレルゲンの皮下注射を繰り返し行う方法で、スギ花粉症、およびダニアレルギー性鼻炎とアトピー型喘息に適応があります。

                                                       

舌下免疫療法(sublingual immunotherapy: SLIT)スリット

SLITはアレルゲンを舌の下(舌下)に投与する方法で、スギ花粉症、およびダニアレルギー性鼻炎に適応があります。

                                                       

従来はSCITが行われていましたが、アナフィラキシーショックなどの全身性副反応や、頻回の通院による負担の軽減のため SLITが普及してきています

                                                      

●治療の流れ

まず、問診と血液検査または皮膚テストで患者さんのアレルギーの原因(アレルゲン)を確かめます。

                                                       

SCITは薄く希釈したエキスを少量から注射していきます。

はじめは週1回、少しずつ量を多く、濃度を高くしていき、適当な濃度になったら間隔をあけ、2週に1回から最終的には月1回にして、その濃度(維持量)を続けていきます。

効果がでるまでに約3か月はかかります。

効果を維持するために最低2年、できれば3年以上月1回の注射を続けます。

                                                       

SLITは1日1回舌下に薬剤を投与します。

投与後は1分間または2分間、あるいは完全に溶解するまで舌下に保持し、その後飲み込みます。

投与後5分間はうがいや飲食を控えます。

投与前および投与後2時間は入浴や飲酒・激しい運動を避けます。

投与する薬剤(アレルゲン)の量は徐々に増量します

(スギ花粉症なら1または2週間、ダニアレルギー性鼻炎なら3日から1週間など)

副作用への対応を考慮し、初回投与は医療機関内で行い、その後30分間は医師の監視下で待機します

翌日(2日目)からは、自宅で患者さんが投与しますが、日中や家族のいる場所での投与が推奨されます

治療期間は3〜5年が推奨されます。

                                                       

●有効性について

アレルゲン免疫療法では、8割前後の患者さんで有効性が認められています

3年以上治療を続けられた患者さん(有効例)では、治療終了後4〜5年経過した時点での追跡調査で80〜90%の効果の持続が認められています。

飲み薬や点鼻薬、点眼薬はあくまで一時的に症状を抑えるだけで、根本的な治療ではありません。

根本的な体質改善(長期寛解・治癒)を望む患者さんには、積極的にお薦めしています。

                                                      

●安全性について

副作用としては投与部位である口腔内の腫れ痒みなどが最も多くみられます。

アナフィラキシーなど重篤な症状が起こる可能性もあります。

特に、投与後少なくとも30分間、投与開始初期のおよそ1か月などは注意が必要です。

気管支喘息や口腔内に傷や炎症のある方、他の疾患で治療を受けている方、妊婦・授乳婦の方などでは、治療を受けられないことがあります。

                                                      

●注意点

症状不安定期、またはスギ花粉症の場合には花粉飛散時期には開始できません

少なくとも3年間は毎日連続して投与します

投与する際には、1分間、舌下にアレルゲン錠を保持が必要です

                                                      

●治療スケジュールと費用の目安について(3割負担の方)

 確定診断のための血液検査 4000~5000円

 アレルゲン免疫療法開始後、1週間は少ない量で開始し、大きな副作用がなければ増量し維持します

  ①初回 1週間分処方  

  ②2回目 増量して2週間分処方 

  ③3回目以降 4週間分処方 

 スギ花粉症SLITの場合 診察料と薬代の合計 約1800-2000円

                                                      


まとめ

 アレルゲン免疫療法はアレルギーが治癒できる可能性がある唯一の方法です

 ただし即効性はなく、3~5年を目安に年単位の継続が必要です。

 根本的な体質改善(長期寛解・治癒)を望む方には積極的にお勧めします

 管理のしやすいSLITが普及してきています

                                                      

 アレルゲン免疫療法の手引き - 日本アレルギー学会 2022/1/20

 鼻アレルギー診療ガイドライン2020 改定第9版 日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー感染症学会