現在の感染症流行状況について
2023年5月8日から、COVID-19は感染症法上の位置付けが5類感染症となりました。
その後の当院における抗原検査陽性者数の推移を提示します。
(個人情報保護の観点から総数は非公開とします」
5月以降、COVID-19は右肩上がりで陽性者数が増加し、8月下旬をピークに減少しました。
12月2週目より再度増加傾向に転じました。
ほぼ全例が経路不明のため、感染が拡大している状況が想定されます。
インフルエンザは8月下旬より増加し始め、12月上旬をピークに減少傾向です。
今年はインフルエンザA型が2種類あり、さらにB型もあるため、今後も再感染と再増加が予想されます。
感染拡大期にあり、引き続きリスクが高い状況では感染対策が必要です。
感染症法上の位置づけ変更後の療養について
2023年5月8日以降、新型コロナウイルス感染症は感染症法上の5類へ移行されます。
それに伴い行動制限などの法的な拘束はなくなり、感染対策や隔離をするかどうかは個人の判断となります
感染者との接触の機会が増える可能性があり、リスクの高い方の感染対策がこれまで以上に重要です
今後の行動の目安として、4/14に厚生労働省新型コロナウイルス感染症対策推進本部より発行された資料を紹介します。
Q1:新型コロナウイルス感染症は他の人にうつすリスクはどれくらいありますか?
・発症2日前から発症後7~10日間は感染性のウイルスを排出している。
・発症後3日間は感染性のウイルスの排出量が非常に多く、5日間経過後は大きく減少することから、特に発症後5日間が他人に感染させるリスクが高い
Q2:新型コロナウイルス感染症にかかったら、どのくらいの期間外出を控えればよいでしょうか?
外出を控えることが推奨される期間
・発症日を0日として5日間は外出を控えること
・5日目に症状が続いていた場合は、熱が下がり、痰やのどの痛みなどの症状が軽快して24時間程度が経過するまでは、外出を控え様子をみること
周りの方への配慮
・10日間が経過するまでは、ウイルス排出の可能性があることから、不織布マスクを着用したり、高齢者等ハイリスク者との接触を控える
Q3:5月8日以降の『濃厚接触者』の取り扱いはどのようになりますか?
『濃厚接触者』として法律に基づく外出自粛は求められません
Q4:家族が新型コロナウイルス感染症にかかったら、どうしたらよいですか?
・新型コロナにかかった方の発症日を0日として、特に5日間はご自身の体調に注意してください。7日目までは発症する可能性があります。
・手洗い等の手指衛生や換気等の基本的感染対策のほか、不織布マスクの着用や高齢者等ハイリスク者と接触を控える等の配慮をしましょう。
・もし症状が見られた場合には、発症者と同様の対応となります(Q2)
まとめ
・5類への移行により法律上の行動制限などの拘束力はなくなります
・感染者との接触の機会が上がる可能性があり、リスクの高い方の感染対策はこれまで以上に重要です
・発症2日前から発症後5日間は特に感染力が強い期間です。
・発症した場合は最短で5日間の自主隔離が推奨されます。
・ウイルスの排出は軽快後も発症10日程度までは続くため周囲の方へ移さない配慮が必要です
引用文献
新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置付け変更後の 療養期間の考え方等について
厚生労働省 令和5年4月14日
これからの医療機関におけるコロナウイルス対策について
第118回 新型コロナウイルス感染症対策 アドバイザリーボード(令和5年3月8日)が開催されました。
感染症上の類型変更を見据えた、今後の感染対策についての提言がありました。
医療機関と高齢者施設における新型コロナウイルス対策についての見解
今回はこちらの内容から医療機関におけるコロナウイルス対策について抜粋します
感染対策の基本
手指衛生などの標準予防策、マスクの適切な着用、十分な換気
重症化リスクの高い人たちが集まる医療機関や高齢者施設では感染対策を続ける
重症化リスクの高い方々はワクチン接種を最新の状態に保つ
Q 医療機関や高齢者施設において、日常的にマスクを着用する必要がありますか?
→ 重症化リスクの高い方々が集まる場所では、サージカルマスクを着用することが望ましい
個室や個人のベッド上、利用者の出入りの少ない施設ではマスクを外しても可
医療・介護従事者は常にマスクを着用して業務にあたる
認知症や基礎疾患の状態などマスク着用困難な場合はマスク着用を強要しない
Q 医療機関や高齢者施設におけるエアロゾル感染対策はどのように行いますか?
→ できるだけ室内での密集を避けることと、効果的な換気を実施する
施設内の換気は機械換気を常時運転し、CO2 モニターを用 いて1000ppm 以下とする
十分な換気効果が得られにくい空間では空気清浄機を活用する
Q 感染者の診療やケアにあたる際には、どのような感染対策が求められますか?
→ エアロゾル曝露がある状況(検体採取など)では N95 マスクを着用
外来診療など短時間の接触で室内換気が良好な状況では、双方がサージカルマスクを着用
診療者はフェイスシールドなどにより目を保護する
身体密着がなければガウンやエプロンなどは不要
使い捨ての手袋を使用することが望ましいが、速やかにアルコール消毒や手洗いができれば不要
Q 発熱患者の外来診療については、他の外来患者と分ける必要がありますか?
→ 可能な範囲で分離する
発熱患者に限らず、診療所内ではサージカルマスクを着用を促す
まとめ
リスクが低い状況においてはCOVID-19対策が緩められました
エアロゾル発生がない状況であれば、双方サージカルマスクで可となります
未発症のCOVID-19の方もおられるため、クリニック内ではマスク着用をお願いします
第118回(令和5年3月8日) 新型コロナウイルス感染症対策 アドバイザリーボード 資料3-10
厚生労働省
よくある症状 ⑥発疹について
見た目でわかる皮膚の変化 を 皮疹 と呼びます
そのうち特に急に現れた皮疹を 発疹 と呼びます
赤くなってかゆい、ぽつぽつがでた、皮膚がもりあがってきた、など様々あります。
皮疹は 原発疹 と 続発疹(原発疹が変化したもの)に分類されます
それぞれの見た目、大きさ、経過により以下の呼び方に分かれます
原発疹
・盛り上がりのない色の変化 → 紅斑(赤)、紫斑(紫)、色素斑(その他)
・盛り上がりのあるもの → 丘疹(1cm未満)、結節(1-3㎝未満)、腫瘤(3㎝以上)
・内容をいれた盛り上がり →水疱(水)、膿疱(膿)
・一時的な盛り上がり → 膨疹(24時間以内に消退)
続発疹
・皮膚が欠損するもの →表皮剥離、びらん、潰瘍、亀裂(深さで名称が変わります)
・隆起、または陥凹するもの → 瘢痕、苔癬化、萎縮(皮膚が固くなり縮んだものなど)
・皮疹上に付着するもの → 鱗屑、痂疲(かさかさ、かさぶたなど)
診断の手順は
・急性の発疹(数日~2週以内)
・亜急性(2週~1か月以内)・慢性(1か月以上)
によりわかれます
急性の発疹のうち、生命にかかわる重要緊急疾患をKiller rashと呼びます
Killer Rash として以下の病気が知られています
敗血症疹、電撃性紫斑病(髄膜炎菌感染症など)、感染性心内膜炎、トキシック・ショック症候群
スティーブンス・ジョンソン症候群、中毒性表皮壊死症、川崎病、アナフィラキシー・ショック
重症を示唆するサイン(red flag sign)
バイタルに異常がある(脈拍、血圧、血中酸素濃度の異常)
アナフィラキシー症状(皮膚の他、呼吸・循環・消化管症状)
急速に拡大する皮疹、特に水疱、紫斑
髄膜刺激徴候(頭痛、嘔吐、項部硬直:首を前屈できないなど)
がある場合は重症の可能性があり、専門医療機関の受診が必要です。
red flag singがない場合は、発熱の有無や、発疹の範囲で病態を鑑別します
発熱がある場合
局所性(体の一部分にみられる)
水疱 → 単純ヘルペス、手足口病、水痘など
紅斑・丘疹 → 丹毒、蜂窩織炎、壊死性筋膜炎、麻疹、全身性エリテマトーデスなど
紫斑 → 感染性心内膜炎など
全身性(体の全体にみられる)
水疱 → 水痘、播種性帯状疱疹、痂疲性伝染性膿痂疹、敗血症疹など
紅斑・丘疹 → 麻疹、風疹、伝染性単核球症、HIV感染症、伝染性紅斑、猩紅熱、ツツガムシ病、川崎病など
紫斑 → 敗血症疹など
発熱がない場合
接触性皮膚炎(かぶれ)、じんましん、虫刺症(虫刺され)、帯状疱疹、毛嚢炎など
※亜急性・慢性経過の皮疹の場合は、特殊な病態の可能性があり、皮膚科専門医の診察が必要です
まとめ
急にでてきた皮膚の変化を発疹とよびます
一般的にはアレルギーや感染が原因となることが多くみられます
症状が強い場合や悪化する場合は、すぐに専門医療機関へ紹介が必要です。
参考文献
外来医マニュアル第4版 第2章 症候編 発疹 医歯薬出版
臨床医マニュアル第5版 24章 皮膚・軟部組織疾患 医歯薬出版
新型コロナウイルス感染症 診療の手引き(第9.0版)について
厚生労働省より、医療機関向けに新型コロナウイルス感染症 診療の手引きが発行されています
2020年3月の第1版が発行され、今回で第9版となりました。
主な内容や改訂点を抜粋します
1 病原体・疫学
病原体
・2022 年12 月の時点で世界で検出されるウイルスのほぼすべてがオミクロン
・オミクロンの中ではBA.5 系統が主流
・BQ.1 系統,XBB 系統、BM.1.1.1 系統などの亜系統が複数報告
国内発生状況
・2023 年2 月の時点で新規感染者数は全国的に減少傾向
・高齢者の減少は小さく、高齢者施設と医療機関の集団感染も多い
海外発生状況
・世界的な検査数の減少のため,感染者数は過小評価
感染者数 多くの地域で減少または不変、東地中海地域は増加
死亡者数 西太平洋, アメリカ, 東地中海地域で増加
2 臨床像
・オミクロンでは鼻汁・鼻閉,咽頭痛などの感冒様症状の頻度が増加、嗅覚・味覚障害の頻度が減少
・オミクロンの流行が始まってから世界中で再感染の報告が増加
重症化リスク因子
発熱などの症状がある方の受診・療養の流れ
3 症例定義・診断・届出
届出の対象
4 重症度分類とマネジメント
5 薬物療法
一般的に大部分の方は対症療法で軽快します
重症化リスクの高い方に抗ウイルス薬が適応となります
※詳細は過去のブログ 新型コロナ感染症(COVID-19)について ③治療 をご参照ください
6 院内感染対策 (省略します)
7 退院基準・解除基準
陽性者の療養期間
※一般的な外来診療の場合 発症日の翌日から7日間みて 軽快していれば8日目から隔離解除
※2023年5月8日にCOVID-19が感染症法上の『5類』へ変更後は、外出自粛が廃止となる見込みです。
まとめ
・COVID-19はオミクロンに置き換わり症状が軽くなっています
・高齢者施設と医療機関の集団感染はまだ多くみられます
・リスクの高い方は重症化することがあり、早期に抗ウイルス薬が推奨されます
・5類へ変更後は外出自粛が廃止となりますが、感染予防と拡大防止を継続しましょう
引用文献
厚生労働省 新型コロナウイルス感染症 診療の手引き 第9.0版 (2023年2月10日)
マスク着用の考え方の見直し等について
令和5年5月8日から、COVID-19は感染症法上の5類感染症に変更となる見込みです
それに先立ち、令和年3月13日よりマスク着用についての取り扱いが変更になります
『マスク着用の考え方については個人の判断に委ねることを基本とする」
現在の感染状況や厚生労働省アドバイザリーボードにおける議論を踏まえ2月10日に決定されました
今回は、こちらの文献を紹介します。
個人の判断と言われても、現実的にはなかなか判断が難しいところがあります。
そのため、その目安として感染防止対策としてマスクの着用が効果的である場面を挙げています
マスクの着用が推奨される状況
①屋内
他者と身体的距離(2m 以上を目安)がとれない場合
他者と距離がとれるが会話を行う場合
②屋外
他者と距離がとれず会話を行う場合
③高齢者等との面会時や病院内など、重症化リスクの高い方と接する場合
④着用が効果的な場面
(1)医療機関受診時
(2)医療機関や高齢者施設等への訪問時
(3)通勤ラッシュ時等混雑した電車やバスに乗車する時
逆に必要ないとされる状況
①屋内
他者と身体的距離がとれて会話をほとんど行わない場合
②屋外
他者と身体的距離が確保できる場合
他者と距離がとれない場合であっても会話をほとんど行わない場合
③乳幼児
(小学校に上がる前の年齢)、特に2歳未満では推奨されない。
2歳以上の就学前の子供についても、マスク着用を一律には推奨しない。
5類へと変更になると自粛要請ができなくなるため、症状がある場合についての記載もあります。
〇症状がある場合、新型コロナウイルス感染症の検査陽性の場合、同居家族に陽性者がいる場合は、周囲の者に感染を広げないため、外出を控えること。
〇通院等やむを得ず外出をする時には、人混みは避け、マスクを着用すること。
感染者と接する機会や、遷してしまう機会が増える可能性もあり、適切なマスクの着用が求められます。
まとめ
マスク推奨 屋内で密な場合、医療機関や重症化リスクの高い方に接する場合
マスク不要 十分な距離や換気がある場合、会話をしない場合
体調が悪い時は自主的に休みましょう
重症化リスクの高い方へうつさないことが最も重要です。
引用文献
新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけの変更等に関する対応方針について
(令和5年1月 27 日 新型コロナウイルス感染症対策本部)
マスク着用の考え方の見直し等について (令和5年3月 13 日以降の取扱い)
(令和5年2月10日 厚生労働省)
よくある症状 ⑤倦怠感について
2023/02/09 ☆よくある症状☆呼吸器内科☆病気の解説☆発熱外来
倦怠感は一般的に だるい、つらい と表現されます
疲れやすい、から 疲れてなにもできない まで程度は様々あります。
倦怠感の原因としては、以下が挙げられます
急性発症、意識障害、症状がつよい(呼吸・苦痛など) 冷汗、嘔吐、血圧低下
などがみられるものは重症の可能性があり、早期に診断が必要です。
倦怠感の他にある症状(随伴症状)で原因の鑑別をします
発熱 → 感染症、膠原病・血管炎、悪性腫瘍、肝炎
労作時呼吸困難 → 心不全、貧血
悪心 → 肝・腎・副腎不全、薬物・毒物
口渇 → 脱水、糖尿病、高Ca血症、薬物
体重減少 → 慢性炎症・感染症、悪性腫瘍、糖尿病、甲状腺機能亢進症、副腎不全
体重増加 → 心不全、腎不全、甲状腺機能低下症
便秘 → 高Ca血症、甲状腺機能低下症
しびれ → 栄養障害、糖尿病
抑うつ気分 → うつ病
それぞれの病気の特徴を挙げます
①心不全
発症リスク: 動脈硬化のリスク(特に高血圧)、虚血性心疾患、弁膜症、心筋症の既往など
症状: 胸痛、呼吸困難、臥床時の咳、むくみ、体重増加、動悸、失神
②貧血
発症リスク: 腹部手術歴、癌の既往、肝疾患・腎疾患、月経過多、偏食など
症状: 労作時の息切れ・動悸
③脱水
発症リスク: 経口摂取不良 嘔吐、下痢、多尿、発熱・発汗、高温環境への暴露
症状: 口渇、尿量低下、体重減少
④感染症
発症リスク:感染症の暴露歴、免疫不全のリスクがある など
症状: 呼吸器、肝・胆・膵を含む消化器、泌尿生殖器、皮膚、関節などの局所症状
⑤肝不全・肝炎
発症リスク: アルコール多飲、輸血歴、薬剤使用歴、肝疾患既往など
症状: 食欲不振、悪心・嘔吐、右季肋部痛、腹部膨満、浮腫、黄疸・着色尿、掻痒感、発熱・関節痛
⑥腎不全
発症リスク: 高血圧、糖尿病、腎疾患・タンパク尿、膠原病の既往、薬剤使用歴、腎疾患の家族歴
症状: 食欲不振、悪心・嘔吐、尿量減少、呼吸困難、浮腫
⑦副腎不全(ホルモンが不足します)
発症リスク: ステロイド内服歴、結核やがんの既往、先行するストレス(感染症、外傷、手術など)
症状: 食欲低下、悪心・嘔吐、腹痛、下痢・便秘、発熱、筋肉・関節のこわばり
⑧血糖異常(低血糖や高血糖)
発症リスク: 糖尿病の既往 血糖降下薬・インスリンの使用歴
症状: 空腹感・あくび(低血糖)、口渇・多飲・多尿・体重減少(高血糖)
⑨電解質異常
発症リスク: 癌や呼吸器疾患の既往、薬物、アルコールの使用 など
症状: 頭痛・悪心・痙攣・意識障害(低Na血症)、脱力・多尿・便秘(低K血症)、多尿・口渇・便秘・悪心・嘔吐・意識障害(高Ca血症)
⑩希死念慮を伴ううつ病
発症リスク: 抑うつ気分、喜びの消失、全身倦怠感の日内変動、睡眠障害、食欲低下、集中力・決断力の低下、不安焦燥、自信の喪失 など
症状: 暗い表情、小さな声、遅い返答、身だしなみがみだれている など
⑪栄養障害
発症リスク: 摂食障害、消化器手術歴、アルコール多飲歴、慢性下痢、偏食(菜食主義など)、肝疾患の既往
症状: 体重減少、むくみ、しびれ、ふらつき、認知機能低下、皮膚・粘膜のあれ、労作時息切れ
⑫薬物・毒物
発症リスク: 利尿剤、降圧剤、向精神薬、抗ヒスタミン薬、筋弛緩薬、抗癌剤、アルコール、カフェイン、ニコチンをふくめ乱用している薬物の禁断症状の可能性もあり
症状: 起立性低血圧、意識変容、粘膜乾燥、腸蠕動音低下など
⑬膠原病・血管炎
症状: 筋肉痛・関節痛・こわばり、皮疹、レイノー現象(手足の先が部分的に白くなる)、頭痛、体重減少、眼・口の渇き、顔面紅斑、皮下結節、眼の充血、潰瘍、丘疹状出血斑、関節の圧痛、可動痛、関節腫脹、熱感、知覚低下など
⑭悪性腫瘍
発症リスク: 癌の既往歴、喫煙など
症状: 体重減少、消化器・呼吸器・泌尿生殖器に関する局所症状、夜間の背部痛・腰痛など
⑮甲状腺機能異常
発症リスク: 女性におおい、甲状腺疾患既往歴
症状: 動悸、発汗過多、暑がり、食欲あるのに体重減少、下痢、月経過少(甲状腺機能亢進症)、眠気、発汗減少、寒がり、体重増加、便秘、月経過多、むくみ、認知低下(甲状腺機能低下症)
まとめ
倦怠感は多くの病気でみられ、病気が見つかるきっかけとなることもあります
ながく続く場合は重大な病気が隠れている可能性もあり、放置せずに原因を調べましょう。
急速に進む場合や症状が強い場合は、早急な診断と治療が必要です。
参考文献
診療エッセンシャルズ新改訂第3版 第2章 全身倦怠感 日経BP
よくある症状 ①発熱について
2023/01/26 ☆よくある症状☆呼吸器内科☆病気の解説☆発熱外来
年齢を問わずよく見られる症状の一つです
感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(感染症法)では
「発熱」 体温が37.5℃以上
「高熱」 体温が38.0℃以上
を指します。
よく言われる「平熱」、や「微熱」の定義はありませんが、一般的には
「平熱」 37.0℃ 未満
「微熱」 37.0~37.4℃
があてはまります。
「平熱」には年齢の影響や個人差もあるため、それぞれご自分の平熱を知っておくとよいでしょう。
おおよそ「平熱」+0.5~0.7℃が、なんとなく調子のすぐれないと感じる「微熱」の目安と考えられます。
厚生労働省は37.5度以上の「発熱」が4日以上続く場合をCOVID-19を疑う目安としています。
体温は測定する条件(場所、時間、性別、年齢など)によっても変わるため注意が必要です。
測る部位 (直腸>口>腋の下で0.3~0.5℃の差)
健康な方でも0.5-1.0℃ほどの日内変動 (早朝に最低で夕方に最高、腋窩で37.3℃まで許容)
月経のある女性 (黄体期に+0.6℃上昇もありえる)
超高齢の方や低栄養の方 (体温が低くなることがある)
発熱の病態は大きく二つに分類されます
①Fever(発熱) ②hyperthermia(高体温症)
①Fever(発熱) → 解熱剤が有効です
外因性(感染や化学物質)、内因性(組織壊死や免疫反応)により
マクロファージなどの免疫細胞が発熱物質(サイトカイン)を放出することで
視床下部の体温調節中枢の設定値を上昇させ体熱産生と放熱抑制が起き体温が上昇
何らかの原因により炎症が起こり、発熱物質がつくられるため体温が上がる仕組みです。
例: 感染症、腫瘍、膠原病・血管炎、肉芽腫、アレルギー、組織壊死、血栓症・塞栓症、輸血反応など
原因の治療や、発熱物質を抑えることで熱を下げることができます
②Hyperthermia(高体温症) → 解熱剤が効きません
放熱能力を抑える環境要因(高温環境、乳児の過度の厚着)や身体的要因(内分泌疾患、薬剤)による
代謝亢進に伴う熱産生の増加、熱放熱の低下によって体温が上昇
体温調節中枢の設定値の変更はない
炎症ではなく、環境要因や全身の代謝が病的に上がること体温が上がる仕組みです
例: 熱中症、内分泌異常(甲状腺機能亢進症、副腎クリーゼ、褐色細胞腫など)、薬物作用・離脱、うつ など
強制的に冷やさない限り体温が下がりません。
診療の流れとしては、まずは経過から発熱の原因を類推します。
①急性(発症後数日以内)
原因としてウイルスや細菌などの感染症が多くみられます
感染症が重症化しやすい要素として
年齢 3か月未満の小児、超高齢者
免疫不全状態 ステロイド・免疫抑制剤、脾摘後、HIV感染
重度の基礎疾患 糖尿病、腎不全、肝硬変、COPD,悪性腫瘍
人工器官などの体内異物 人工弁、人工関節、人工血管など
があり、あてはまる場合は特に注意が必要です。
他に身体所見や血液検査から他の緊急対応が必要な病気も鑑別します
(肺塞栓・梗塞、心筋梗塞、腸管壊死、劇症肝炎、副腎クリーゼ、甲状腺疾患など)
②亜急性(週の単位)~慢性(月の単位で持続)
慢性感染症(肺結核などの抗酸菌症、真菌症など)
膠原病・血管炎
その他の非感染性炎症性疾患
内分泌異常
腫瘍
などを鑑別として検査を行い、原因を調べます
まとめ
発熱の原因は多岐にわたります。
①まずは頻度が高い感染症の除外(経過をみながら1週間程度で判断します)
②よくならない場合は、他の病気がないか調べる の流れが一般的となります
発熱の原因を調べる検査は
抗原・PCR検査、血液検査、喀痰検査、レントゲン検査、CT検査などがあります
参考文献
診療エッセンシャルズ新改訂第3版 第10章 日経BP
感染症法について 「5類」とは
感染症法とは
感染症の予防 及び 感染症の患者に対する医療に関する総合的な施策の推進 を図る
目的で制定されている法律です
感染症法では、各感染症は、感染力 及び 罹患した場合の重篤性等 を総合的に判断し
1~5類、新型インフルエンザ等感染症、指定感染症、新感染症
の8つに位置付けられ、実施できる措置が決められています
流行当初、COVID-19の詳細が不明であったため2類相当の「指定感染症」とされました
2021年の2月に法改正では5つの類型に入らない「新型インフルエンザ等感染症」に位置づけられ、2類よりも厳しい措置や強い行動制限が取れるようになっていました。
流行から3年が経過した現在、新型コロナウイルス感染症はオミクロン株に置きかわり、重症化率も低下しています。
また社会・経済活動への影響も鑑み、
「新型インフルエンザ等感染症」 から 「5類」 へ引き下げられる見通しとなりました。
そこで、今後COVID-19治療はどのように変わるのかをまとめてみました。
現在の感染症法において、実施できる措置は以下のとおりです
現在、COVID-19は「新型インフルエンザ等感染症」のため、かなり強力に措置が実施できるのに対し、
「5類」の場合は、入院勧告や就労制限、まん延防止策は実施できなくなります
現在、COVID-19の入院費、診断に必要な外来検査(抗原・PCR検査)、ワクチンは 公費 が適応ですが
「5類」の場合は、原則は自己負担が発生します
2023年1月11日 新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボードでは以下の影響が懸念されています
感染症法に基づく入院措置がなくなることによる影響
・行政が病床確保や入院調整を行ってきたが、措置がなくなる可能性
・今後は入院は病院間の連携により実施されるが、陽性者が増加した場合は対応が困難となる可能性
・自己負担が発生することにより、感染者が検査や受診を受けない・受けられない可能性
感染症法に基づく感染者の自宅・ホテル待機がなくなることによる影響
・感染者の自宅/宿泊療養、濃厚接触者の待機の要請がなくなるため、感染者との接触機会が増える可能性
・家族などを介した重症化リスクの高い高齢者への感染が発生する可能性
2023年春に COVID-19は「5類」へ引き下げられる見通し、となっています。
ただし経過措置として、当面の間は医療費などの公費負担は継続されるようです。
ウイルス自体が消滅したわけではないため、今後もCOVID-19は増減を繰り返すと予想されます。
ただし、基本的な対策自体はこれまでと同様です
① 体調が悪い時は休み、自宅または医療機関で検査を受けましょう
② 検査で陽性の場合
重症化リスクの高い方 発症5日以内であれば 抗ウイルス薬
重症化リスクのない方 対症療法
検査で陰性の場合
2-3日は自宅で様子を見ましょう
症状が続く/悪化する場合は再検査を受けましょう
③ 軽快した場合 発症翌日から7日間 みて、8日目から解除
悪化する場合 医療機関の受診が必要です
COVID-19自体の重症化率は低下していますが、リスクがある方への感染は生命にかかわります。
ご高齢の方はCOVID-19よりは、併発する誤嚥性肺炎や心不全などが死因となることが多くみられます。
重症化リスクの高い方へうつさないことが、今後COVID-19と共存するため最も重要と考えます。
まとめ
今春にもCOVID-19は「新型インフルエンザ等感染症」から「5類」へ引き下がる見込みです
法律上の根拠がなくなることでCOVID-19のための病床確保が難しくなる可能性があります
重症化率は低下していますが、感染力はつよく、ご高齢の方は合併症が生命にかかわります
重症化リスクの高い方へうつさないことが、最も重要と考えられます。
参考資料 厚生労働省 新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード
2023年1月11日 2023年1月17日 資料
COVID-19罹患後症状について ③ 神経系症状
神経系の罹患後症状について
疲労感・倦怠感、思考・集中力低下(brain fog)、頭痛、睡眠障害、めまい、
嗅覚・味覚異常、筋痛、しびれ
などが報告されています
発症から6 週間以上持続する神経症状があった方は,
疲労感・倦怠感(85%),brain fog(81%),頭痛(68%),しびれ感や感覚障害(60%),
味覚障害(59%),嗅覚障害(55%),筋痛(55%)
を認めたと報告されています。
疲労感・倦怠感は、
筋痛性脳脊髄炎/ 慢性疲労症候群 (Myalgic Encephalomyelitis/Chronic Fatigue Syndrome, ME/CFS)
に類似している病態の可能性が報告されています。
筋痛性脳脊髄炎/ 慢性疲労症候群とは
検査上は明らかな原因がはっきりしないのに対し、6ヵ月以上続く、もしくは再発を繰り返す
強い倦怠感を伴う日常活動能力の低下
活動後の強い疲労・倦怠感
睡眠障害、熟睡感のない睡眠
認知機能の障害、または起立性調節障害
がみられるものを指します。
(厚生労働省「CFS研究班」ホームページ 『慢性疲労症候群とは』より引用)
強いストレスや、ウイルス感染による免疫系の異常などの関与が示唆されていますが、原因はまだ明らかとはなっていません
brain fog は,
「脳の中に霧がかかったような、頭がボーっとする」状態で
記憶障害、集中力不足,精神的な疲労,不安などの症状がみられます。
うつ病や、認知症の早期を反映している可能性もあります
頭痛,筋痛,認知症状 などは、時間の経過とともに改善することが多いようですが
疲労感・倦怠感は、持続し増悪する可能性もある
と報告されています
神経系の罹患後症状発症のリスクとして
重症度が高い、喫煙者、女性、肥満、高齢、糖尿病 など が挙げられています
罹患後症状(神経系症状)の評価と対応について
神経系症状が3か月~半年以上続く場合
まずは、COVID-19 とは関係のない他の病気がないか調べます
神経系の精密検査 → 専門医療機関で頭部MRI、脳波,脳脊髄液検査
熟眠感がない場合 → 睡眠時無呼吸群検査
動悸や頻脈,起立性低血圧 → 自律神経異常症を疑います
疲労感・倦怠感が強い場合 → 血液検査、内分泌検査などを行います
明らかな原因がない場合は、罹患後症状と診断します。
まとめ
神経系の罹患後症状は疲労感・倦怠感、brain fog、頭痛、睡眠障害などが多くみられます
時間とともに回復することが多いですが、疲労感・倦怠感は持続する可能性もあります
COVID-19以外の原因がないかを調べ、明らかではない場合は罹患後症状と判断します
確立した治療法は定まっていませんが、症状を和らげる対症療法を行います。
引用文献
厚生労働省 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き
別冊 罹患後症状のマネジメント 第2.0版 (2022年10月14日)