よくある症状 ④咳・痰について
2023.02.07 ☆よくある症状☆呼吸器内科☆病気の解説
咳は
痰がからむ場合を 湿性咳嗽
痰がからまない場合を 乾性咳嗽
と呼びます。
主な原因は以下が挙げられます。
また咳の持続期間により
3週間以内 → 急性咳嗽
3-8週間 → 遷延性咳嗽
8週以上 → 慢性咳嗽
とわけています。
以下の項目をもとに原因の鑑別を進めます
①経過
急性
ほとんどが感冒(かぜ)や急性気管支炎・肺炎などの感染症です
気道異物、気胸、クループ、気管支喘息、間質性肺炎、うっ血性心不全、刺激ガス吸入も原因となります
遷延性、慢性
3週間以上持続する咳は感染症の頻度が下がります
かぜや気管支炎が治った後に数週間咳が続くことがあります(感染後咳嗽)が、次第によくなることが多いです
8週間以上は咳喘息、アトピー咳嗽、後鼻漏が多くみられます。
そのほか結核などの慢性感染症や肺癌も鑑別となります。
②時間帯
夜間~早朝に症状が悪化する場合 → 気管支喘息、咳喘息を疑います
横になった直後に悪化する場合 → 心不全を疑います
③痰の有無
乾性咳嗽の場合(痰がない)
感冒(かぜ)・気管支炎、気管支喘息、COPD、胸膜炎、
間質性肺炎、過敏性肺炎、気胸、異物、刺激ガス吸入、クループなど
湿性咳嗽の場合(痰がある)
膿性痰 → 肺炎、急性気管支炎、慢性期気管支炎、気管支拡張症 など
粘性痰 → 感冒(かぜ)、急性気管支炎、肺炎、気管支喘息、うっ血性心不全、肺癌 など
血痰 → 肺結核、肺癌、気管支拡張症、肺梗塞、うっ血性心不全、肺炎 など
④ペットの飼育
気管支喘息、鳥飼育による過敏性肺臓炎、オウム病(クラミドフィラ感染症)など
⑤喫煙
肺癌、慢性閉塞性肺疾患(COPD) など
⑥職業歴
職業性喘息、職場環境に伴う過敏性肺炎(吸い込んだものが原因となる)
⑦薬歴
ACE阻害剤(降圧剤)による咳
薬剤性肺障害 など
⑧居住環境
転居・新築 → 気管支喘息
古い木造建築 → 過敏性肺臓炎
エアコン→ 空調病
羽毛布団 → 慢性過敏性肺臓炎
温泉・24時間風呂 → レジオネラ肺炎
⑨他の症状があるか
発熱 → 呼吸器感染症、間質性肺炎、過敏性肺炎、胸膜炎など
喘鳴 → 気管支喘息、心不全、COPD、気道異物
胸痛 → 気胸、胸膜炎、肺炎
起坐呼吸(横になれない) → 喘息発作、うっ血性心不全
胸焼け → 逆流性食道炎
咽頭痛 → 感冒、咽頭・扁桃炎
喉頭違和感 → 咽喉頭異常症 アトピー咳嗽
診療の流れは以下の通りです
急性発症の初診の場合 → 全身状態が良好であれば感冒や急性気管支炎として加療します
※近年はCOVID-19が流行してるため、初診時に抗原検査やPCR検査を行います
※喫煙者は禁煙が必要です(咳の原因となります)
慢性経過、再診、高齢者、聴診異常所見がある、高熱の場合 → レントゲン検査や血液検査を実施します
※近年はCOVID-19が流行してるため、必要時に抗原検査やPCR検査を行います
※結核と肺癌は必ず鑑別する必要がありますので、必要に応じて喀痰検査、細胞診検査を行います
レントゲン写真や血液検査で所見なしの場合
呼吸機能検査や喀痰検査(細胞診、培養)を追加します
副鼻腔炎や喉頭異常所見などの耳鼻科的疾患も考慮します
これらの流れで原因を探し、それに対する治療を行います。
まとめ
咳には湿性咳嗽(痰があるもの)と乾性咳嗽(痰がないもの)があります
咳の特徴や他の症状と合わせ原因を絞り、必要な検査を行い診断します
急性の咳嗽はほとんどが感染症です。
治った後も数週間遷延することがありますが、次第によくなることが多いです
8週以上長く続く場合や悪化傾向の場合は詳しい検査が必要です
参考文献
外来医マニュアル第4版 第2章 症候学 咳・痰 医歯薬出版