新型コロナ感染症(COVID-19)について ②検査
今回は発熱外来で実施する、COVID-19診断のための検査について解説します
1 検査の性能
検査の性能を示す指標として 感度 と 特異度 があります
感度 病気の人が正しく検査で『陽性』となる割合
感度が高い検査 → 検査が『陰性』の場合は、病気ではない可能性が高い
特異度 病気ではない人が正しく『陰性』となる割合
特異度が高い検査 → 検査が『陽性』の場合は、病気である可能性が高い
病気の人が検査で『陰性』と判定されることを 偽陰性 と言います
病気ではない人が検査で『陽性』と判定されることを 偽陽性 と言います
感度が高い検査は、少しでも疑わしいものは陽性と判断するため、偽陽性が増えます↑
特異度が高い検査は、少しでも疑わしくないものは陰性と判断するため、偽陽性が減ります↓
このように感度と特異度の両立は難しいため、どちらを優先するかで検査の判定基準を決めます。
そのため検査には 偽陽性(病気ではないの陽性) と 偽陰性(病気なのに陰性)がでてしまいます。
COVID-19の検査は感度は60~70%、特異度は99.8~99・9%と報告されています。
特異度の高い検査は病気の確定診断に適してします。
感度がやや下がるため、偽陰性(病気なのに陰性)に注意が必要です。
抗原検査には 偽陽性(病気ではないの陽性)も一部みられることが知られています。
2 COVID-19の検査
現在の感染を調べる検査と、過去の感染を調べる検査にわかれます
現在の感染を調べる検査
〇 核酸検出検査
ウイルスの遺伝子の一部を増幅する検査です。
一定以上のウイルス量であれば検出可能です。
①リアルタイム RT-PCR法
結果が出るまで数時間かかりますが、ウイルス量まで評価できます
②等温核酸増幅法(LAMP法、TRC法、TMA法、NEAR法等)
リアルタイムRT-PCR法とと比較して感度は落ちるもの、反応時間が35~50分程度と短い利点があります
〇 抗原検査
ウイルスの構成成分であるタンパクを検出する検査です。
一定以上のウイルス量がないと偽陰性となります。
①抗原定性検査
イムノクロマトグラフィー法によりウイルスの抗原を検知します
症状がある方において、発症から9 日目以内の場合は確定診断として用いることができます
簡便で結果が出るまでの時間が短く、外来の検査に有用です。
抗原定性検査は他の検査より感度が低いため、結果が陰性の場合も感染予防策の継続が必要です。
②抗原定量検査
化学発光酵素免疫測定法等により、ウイルス抗原の量を測定できます
感度、特異度ともに核酸検出検査に匹敵しますが、専用の測定機器が必要です。
過去の感染を調べる検査
〇 抗体検査
ウイルス感染後に体の中につくられた抗体を検出します
陽性となる時期は症状出現後、1~3 週間経ってからです
過去の感染を示すものであり、現在の感染は反映していません
3 COVID-19検査の流れ
〇 検体の種類
①鼻咽頭ぬぐい液
感染初期には鼻咽頭ぬぐい液は最も標準的で信頼性の高い検体です
医療者による採取が必要で、飛沫に曝露するリスクが高いです
②鼻腔ぬぐい液
鼻孔(鼻の穴)から2 cm 程度スワブを挿入し採取します
自身で検体採取することが可能なため医療者への曝露リスクを低下できます
感度は鼻咽頭ぬぐい液と比較するとやや低いとの報告もありますが実用範囲内です
③唾 液
自身が自然に徐々に流出する唾液を滅菌チューブに1~2mL程度溜て提出します
飛沫を発しにくいため、周囲への感染拡散のリスクが低いです
感度は鼻咽頭ぬぐい液と同程度と考えられ、採取手技に左右されず実用的な検体です
※検体採取前には飲食や歯磨きから最低10分以上(可能であれば30 分)空けます
〇 適切な検査の実施について
① 症状がある場合
発症から9日以内 抗原検査、核酸検出検査
発症から10日以降 核酸検出検査
② 症状がない場合(濃厚接触者)
核酸検出検査 (抗原定性検査は、無症状者の濃厚接触者への検査は適さない)
曝露日から1~2日間は偽陰性が多いことを踏まえ、3日目以降に実施する
※ただし、十分な隔離期間が取れる場合は、症状がなければ必ずしも検査は不要
まとめ
受診が必要な方は、大部分が『発症9日以内で症状がある場合』にあてはまると考えられます。
抗原検査と、必要に応じて核酸検出検査(PCR)の組み合わせが推奨されます。
検体は鼻咽腔/鼻腔が標準ですが、難しい場合は唾液で代用も十分実用的と考えます。
(インフルエンザ流行期は鼻咽腔検体のみとなります)
次回はCOVID-19の治療について解説します
引用文献
厚生労働省 新型コロナウイルス感染症 病原体検査の指針 第6版 (2022年12月22日)